ヘミングウェイ自身をモデルとしたような主人公(グレゴリー・ペック)が、カバ狩りの怪我で壊疽をおこし瀕死の状態。朦朧とした意識のなかで過去の女性遍歴を回想する。
近くの木にハゲタカが集まり余命をおびやかす。屍臭に誘われハイエナもやってくる。最後は木に集まっていたハゲタカの姿が消え、ハッピーエンド。他愛ないとか、ヌルいとか、甘いとか、現代の眼で観れば厳しいところもあるだろうけど、ハリウッド黄金期の大作(製作はダリル・F・ザナック)だけあって見どころは多い。
短編小説にオリジナル・ストーリー(回想場面)を追加し、アフリカ、パリ、リビエラ、スペインと、テクニカラーで撮られた風景が美しく豪華。撮影のアングル、照明、色彩が見事。ヘミングウェイの原作映画化のなかでは、いちばん好きな作品。
主人公を取り巻く3人の女優(パリで知り合うエヴァ・ガードナー、彫刻家で資産家のヒルデガルド・ネフ、アフリカで主人公の面倒を見ているスーザン・ヘイワード)が綺麗。エヴァ・ガードナーが最高に良い。ネフは素っ裸でリビエラの湾を泳いでいる。ドッキリしたが、よく見ると薄い肌色の水着を着用していた。ずっと看病しているヘイワードは地味な役回りで損してる。
主人公の行動が波乱万丈で、冒険心をくすぐられる。
ヘミングウェイの他の小説からも引用されたセリフに味がある。
ただ、主人公の作家を演じたグレゴリー・ペックは、ヘミングウェイの野性味が乏しかった。「白鯨」のエイハブ船長も迫力なかったし、ペックは汗とか無精髭とかギラギラしたものが似合わない俳優だった。
パリのカフェバーでアルトを吹いているのはベニー・カーター。雰囲気のある色合いで撮られていてとても格好良い。
終盤に登場するウィッチドクターの神秘性を強めて、アフリカン・ファンタジー色を濃く描いていれば、もっと面白くなっていただろう。(原作では、キリマンジャロ山頂にある豹の亡骸に想いを馳せながら主人公は死を迎える)
異国趣味たっぷりのテクニカラーなので、より良質の版で楽しみたいのだが、版権所有のメーカー(20世紀フォックス)からDVDはリリースされていない。
点