ジョーン・フォンテインを追いかけて、50年ぶりくらいに再見。「レベッカ」のころよりはグッと大人になったフォンテインと、ジョセフ・コットンによるメロドラマ。
製作は数多くのヒット作を放ったハリウッド・タイクーンのハル・B・ウォリス。監督はベテラン職人ウィリアム・ディターレ。これ見よがしな演出はないけれど手堅く作られている。
「旅愁」といえば「セプテンバー・ソング」。CDなどの曲目解説でも、映画「旅愁」に使われリバイバル・ヒットしたと書かれている。
映画はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」をクライマックスに用意している。
コンサートでピアニスト役のジョーン・フォンテインが弾いて拍手喝采。感動的に盛り上がる。
ハリウッドはラフマニノフが好きだね。新しいところでは、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で「交響曲第2番」が使われていた。
本作の音楽監督は甘美なオーケストレーションに本領発揮のヴィクター・ヤング。
コスミック出版の500円DVDは音割れしていて残念。
前半はイタリア観光。
ローマに始まって、ナポリ、ベスビオス火山とポンペイ、カプリ島、フィレンツェとイタリアの歴史遺産・名所が、現地ガイド付きで紹介される。
カプリ島の青の洞窟はテクニカラーで見たかったなあ。
目当てのフォンテインは美しく魅力的に撮られていたが、ピアノ教師役のフランソワーズ・ロゼーとコットンの奥さん役のジェシカ・タンディが、奥行きのある役作りで良好。ジェシカ・タンディがフランソワーズ・ロゼーを訪ねてくる場面など、普通に撮っているだけなのに二人の存在は際立っている。ここの芝居がいちばんの見所かも。
ジョセフ・コットンは本作でも地味。
ときおり場面に子供を登場させるのは、子供好きな人物に悪人はいないという観客の先入観を利用した脚本の常套手法。
ポピュラー音楽を介して男と女が惹かれ合う、去ってゆく女を男が空港で見送る、これも「カサブランカ」以来の伝統手法。
そうだ、「カサブランカ」もハル・B・ウォリスの製作だった。
点