すべての道はローマに通じる。
ヴィットリオ・デ・シーカ監督以下スタッフはイタリア人ばかりだが、デヴィッド・O・セルズニック製作のアメリカ映画。
主演はセルズニックのジェニファー・ジョーンズとモンゴメリー・クリフト。
前年(1952年)の「真昼の決闘」を意識していたのか知らないけど、時計のカットを頻繁にインサートして上映時間と劇の進行のタイミングを合せたストーリー構成。
人妻のジェニファーがイタリア旅行中に恋仲になったモンゴメリー・クリフトのアパートを訪ねるファーストシークェンスのあとは、落成したばかりのローマ駅に舞台を固定。
そこを往来する人々のスケッチに、デ・シーカらしい庶民派タッチの人情がうかがえる。公衆電話のナンパ中年男(パオロ・ストッパ)とかコミカルなのも面白いが、構内警察の室長がみせる粋な温情裁きが本作のハイライト。池波正太郎「鬼平犯科帳」にも似たエピソードがあったような気がする。
三等客の待合室でジェニファーが知り合う移民一家、その子どもたちに両手に持ちきれないほどのチョコレートを買い与える場面はデ・シーカならではのネオレアリズモ。
主役ふたりの恋の成ゆきはセリフによって説明される。
その(アップを多用した)やりとりはいささかネチッこくて、うざったい。ジェニファーの目まぐるしく変化する表情は、もはや怪演と呼びたいくらいに凄味がある。
ジェニファーおばさんにスーツケースとコートを届ける少年は、のちに「ウエスト・サイド物語」でトニー役を演じたリチャード・ベイマー。
点