「さらば友よ」のチャールズ・ブロンソンにぞっこん惚れ込んだ脚本家のセバスチアン・ジャプリゾが、ブロンソン主演でアテ書きしたオリジナル・ストーリーをルネ・クレマンが雰囲気たっぷりに演出したミステリー映画。
地中海に面したリゾート地(田舎町)。雨のバス停に赤いバッグを持った不審な男が降り立つファースト・シーンから、沈んだムードのフランシス・レイの音楽がたまらなく良い。(結婚式の場面で流れる)「雨のワルツ」も流麗ないいメロディだ。日本ではこちらがラジオからよく流れていた。
主演はメランコリーという役名のマルレーヌ・ジョベール。少女の面影を残す彼女の視点で、絡み合った2つの殺人事件がトリックとして使われる。「不思議の国のアリス」のようなファンタジックなムードに翻弄され、意図して省略されたと思えるストーリーのつなぎが、複雑な状況に不条理なニュアンスを加味している。 最後に赤いバッグの男の名がマック・ガフィンと明らかにされ、「真相が分かっても誰も喜ばない」結末を一蹴してしまう。理詰めで見る映画じゃない。マルレーヌ・ジョベールとチャールズ・ブロンソンを見て、雰囲気を味わう映画。
赤いバッグ、柱時計の振り子、硝子のくるみ割り、白いミニの衣装、爪を噛む癖、ラブラブなエプロン。ディテールばかりがやけに記憶に残る。
ドイツ駐留とはいえ、アメリカの軍人(ブロンソン)が独製拳銃(ルガーP08)を携帯しているのは、どうなんだろう?
点