自動車泥棒した男ジャン=ポール・ベルモンドは追ってきた白バイ警官を射殺、アメリカからの留学生ジーン・セバーグが滞在するホテルの部屋に転がり込む。
魅力的に撮られたパリの街。
魅力的に撮られたジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグ。
繰り返されることで退屈を誘う音楽。魅力的に響く空疎なセリフ。
アナーキー&ナンセンスの極致。
意味ありげなセリフに意味はなく、全編手持ちカメラによる即興演出。
間延びした芝居の間をカットしただけのジャンプカットが新鮮にとられる。
「映画的なもの」を無計画にぶち込んだ、ゴダールのプライベート・フィルム。
クレジットされているトリュフォーやクロード・シャブロルはほとんど関与してない。
仲間のデビュー作のご祝儀に名前を貸しただけだという。
ゴダールの「勝手にしやがれ」が日本で公開された1960年3月は、トリュフォーの「大人は判ってくれない」も公開されている。マンキウィッツの「去年の夏突然に」やロッセリーニの「ロベレ将軍」も公開されている。日本の若い観客は、ハリウッドの手練職人もネオレアリズモの旗手も過去の遺物と葬り去り、ゴダールとトリュフォーを選んだ。
何かを作るのではなく、何かを壊すために作られた映画。
最低なのはゴダールの技術か、それを受け入れた観客か。
勝手に見やがれ。
DVD特典のドキュメンタリー「スウェーデンホテル12号室」が秀逸。
点