裁判所命令で養育権を取り上げられた若い母親ゴールディ・ホーンは、テキサス州の矯正施設に収容されていた夫ウィリアム・アザートンを脱獄させ、逃走中にパトカーをジャック。警官を人質に幼い息子のもとへと向かう。1969年に実際に起きた事件を題材にしたマシュー・ロビンス&ハル・バーウッドのオリジナル脚本。
ジャックされたパトカーの後を 200台のパトカーがぞろぞろ付いて行く流れが滑稽。
2名の狙撃手が派遣されてきたあたりから、悲劇的な結末が予感される。
長閑な逃亡劇が一転して一触即発のパニックに発展しそうなサスペンス。
無邪気でおバカで可愛いキャラはゴールディ・ホーンに誂えたかのような適役。
気が弱く優柔不断なウィリアム・アザートン、真面目で優しい人質警官マイケル・サックスも好演。
なんといってもパトロール隊を指揮する警部ベン・ジョンソンがいい。流血を避けて事件の解決を模索する苦渋の姿は「テルマ&ルイーズ」のハーヴェイ・カイテルも良かった。
ビジュアル面で語られることが多いスピルバーグだけど、役者の使い方が抜群に上手い。キャラの立て方が(これが商業映画デビューというのに)黄金時代のハリウッド職人監督なみの腕前。
目的地が「シュガーランド」というのもいい。
強いていえば野次馬と法律が悪役。
犯人を撃ち殺して名声を得ようとするバカは「ジョーズ」で賞金目当てに鮫狩りに出る奴らと同類。沿道で激励の言葉をかけプレゼントを投げ込む群衆はその裏返し。
車のクラッシュ・シーンやラストの余韻は「激突!」に似ているものの、今後再映されるようなことがあれば「シュガーランド・エクスプレス」に改題されるんだろうな。
点