クリスマス・アルバム:おしゃれファッション編
December 21 2010
毎日寒い日が続いておりますが、ご機嫌いかがでしょうか。
漫画アクションに連載されていたはるき悦巳の『じゃりン子チエ』によれば、不幸は「寒い、ひもじい、もう死にたい」の順に襲ってくるそうです。
この激寒の季節に、クリスマスとかお正月とか、おめでたい行事で世間を盛り上げて陰気な空気を吹き飛ばすとは、なんて素敵な人類の知恵でありましょうか。
クリスマス・ソング特集第2弾は、おしゃれファッショナブル編です。
小粋な居酒屋で、素敵な恋人とわけ分からんぼったくり価格のカクテルを飲み交わす和やかなひとときに似合いそうな。または深夜の湾岸道路を、お洒落かつ高価なクルマで恋人と一緒にドライブするときに似合いそうな。または道玄坂のホテルで恋人と一緒に過ごすクリスマス・イヴのベッドサイドに似合いそうな、そんなクリスマス音楽をご紹介します。
そもそもクリスマス・ソングなんぞというものは、軽佻浮薄のシンボルのようなもので、大の大人が眉間にしわ寄せじっくり耳を傾けるような代物ではございません。デパート、スーパーマーケット、ディスカウント・ショップ、コンビニ、ドラッグ・ストア、ファミレス、マック、ココ壱、富士そばなどの商業施設で BGMとして垂れ流してるのがお似合いの馬鹿囃子でございます。
これはジャズではない、こんなものばかり聴いてると頭が悪くなる、商業主義に翻弄されおって、この愚か者め! とか。
仰りたいことは百も承知ですが、それを口にするのは野暮ってもんです。
そこのところご理解いただいて、どうかひとつ、怒らないで読んでちょうだいな。
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GRP クリスマス・コレクションGRP Christmas Collection 01. Little Drummer Boy / Daryl Stuermer Release Date: 1988年 |
アメリカ西海岸のフュージョン・レーベル GRPが、1988年にリリースしたクリスマス企画アルバム。デイヴ・グルーシン、トム・スコット、ダイアン・シューア、リー・リトナー、ゲーリー・バートン、チック・コリアなどなど、同レーベル所属の人気ミュージシャンがずらり顔を並べて壮観。すべてのトラックがこの企画のための新録音なのもすごい。贅沢なアルバム。
音楽産業の主力商品が LPレコードから、薄くて小さくて軽くて扱いやすいコンパクト・ディスクに完全移行したころにリリースされ、「こんなのだったら CDで聴くのもアリかもな」と、LP偏重主義を転向させてくれた、思い出の1枚です。
コンパクト・ディスク、いいですよー!
針下げて、針あげて、ひっくり返して針下げて、終わったらまた針あげて、埃や傷に注意して、そっと優しく丁寧にジャケットに戻す、なんて面倒なことは一切なし。トレイにポンと置いて、リモコンピッで一時間前後連続再生。リピートボタンひとつで何度でも何時までも延々演奏可。しかも埃と傷に強い。
文句あるなら言ってみろー!
お言葉に甘えて、このディスク、延々と垂れ流しにしてました。
そうされることを望んでますもんね、存在自体が。
例えばジョン・コルトレーンの『イン・ジャパン』(Impulse!)とかね、1回聴いたらお腹いっぱいもう沢山、次に聴くのは1年後、みたいな気持ちになるんですが、こちらの GRPオールスターズ盤はまるで空気。
空気みたいに軽くてもたれないから、何時でも何処でも何度でも。
録音も、これがデジタルの音かぁー! って感心したくらいクリアでキレイだったし。演奏も良いですからね。クリスマスになると毎年引っ張り出してます。
いまでも通用するコンテンポラリーなサウンドですし……色物企画盤のくせに、意外と長持ちなのよ。
それから数年後の、季節も同じ、厳寒の頃……
真冬の柳の下に、2匹目の泥鰌(どじょう)発見。
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GRP クリスマス・コレクション Vol.2GRP Christmas Collection Vol.2 01. Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow ! / Nelson Rangell Release Date: 1991年 |
前作より3年後にリリースされた GRPクリスマス・オリジナル企画第2弾。ミュージシャンも曲目も前回とはダブらせない趣向で、ラス・フリーマン、パティ・オースティン、スパイロ・ジャイラ、ドン・グルーシンなどが参加。
もともとこのジャンルのミュージシャンに明るくないんですが、半数くらいは知らない名前。でも前作の信頼がありますから買いましたね。
即決即金、金利手数料なし現金払い。石丸電気3号店の店員にビシと金弐千五百円也を叩きつけてやりましたともさぁ。
正直言って、1作目ほどの派手さはないけど、かといって劣るところもなし。つまり、可もなく不可もなしってことですか?
クリスマス・ソングなんて、誰がやったって、こんなもんです。
そんなこんなで、前作と合わせて約2時間、毎年この2枚をローテーションさせてクリスマスをやり過ごしていたところ……
やっぱりいましたよ、3匹目の泥鰌(どじょう)が。
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GRP クリスマス・コレクション Vol.3GRP Christmas Collection Vol.3 01. Feliz Navidad / Tom Scott Release Date: 1993年 |
GRP クリスマス企画アルバム第3弾。トム・スコット、デイヴ・グルーシン、ダイアン・シューア、デイヴィッド・ベノワは Vol.1についで2度目の登場。参加ミュージシャンは他に、ラムゼイ・ルイス、B.B.キングなど。
3作目ともなると、もう青息吐息、1作目のスターが再度出てこないと面子が揃わない。ブルースシンガーの B.B.キングまで引っぱり出してくる始末。それに曲目もネタが尽きたようで。好評だったGRPの企画盤もこれにて打ち止め。
さすがにこれは即断即決できません。購入にちょっと躊躇しましたよ。
しかしながら、3つあるのを2つで済ますほどドライな性格じゃありませんから、リリースされて幾歳月、そのうち買おうか買うまいか、粘っこく気にしてたですよ。
結局、買いましたけどね。
今回は現金じゃないの、クレジットカード。
実店舗じゃないの、インターネット通販。
そう、この『GRPクリスマス・コレクション VOL.3』こそ、ネット通販で買った記念すべき最初のコンパクト・ディスクなのであります。
当時、Amazon.co.jp がキャンペーンをやっておりまして、最初に購入する奴には 500円分のギフト券をプレゼントしてたんですよ。だから実際は 500円引き価格。この機会逃してなるものかと、武者震いしながら買ったですよ。
なにしろ最初ですから、おっかないんです。
住所、名前はもちろんのこと、クレジット・ナンバーとか何度も何度も見直して入力して。万が一、トラブルがあってもダメージが少ない商品(このCDのことよ)を選んで。
慎重の上に慎重を重ね、身動き利かないくらい肩に力いれて、ピリピリ緊張の音をたてながら、勇気奮い起こしてポチッたですよ。
それがもう、今じゃ寝惚けながら、惰性でこんなものまでポチしちゃうんだから、慣れほど恐ろしいものはございません。
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メイキング・スピリッツ・ブライト:スムース・ジャズ・クリスマスMaking Spirits Bright: Smooth Jazz Christmas 01. Have Yourself A Merry Little Christmas / Lee Ritenour Release Date: Oct 2, 2001 |
ギタリストのリー・リトナーがプロデュースしたクリスマス・コンピレーション盤。12曲中7曲をリトナーが編曲、「Have Yourself A Merry Little Christmas」以外の4曲でも、サイドメンとして演奏に参加している。
上記3部作で終了したはずの GRP企画が、21世紀によみがえった!
みたいな驚きはありません。こいつは4匹目の泥鰌(どじょう)ではなく、リー・リトナーの道楽企画。3部作ほどの個性はありません。
本日配達されたばかりで、この記事を書くために聴いてますけど、それさえなければ開封されることもなく「聴かずの間」におくられる気の毒な身の上。
ってか、これ書く予定があったからポチったんですけどね。ポチんなくてもよかったのではと、ただいま反省中。
ちなみに「聴かずの間」というのは、酔狂でポチったものの、いっこうに聴く気が起こらず、かといって部屋に置いたままでは邪魔になってしまう、始末におえない未聴・未開封のCDが送られる隣室(実体は押入)のことで、いわばCDの墓場みたいなもの。処女のまま老い朽ちてしまう可哀想なCDが、暗い室内に多数身を沈めております。合掌!
リトナー盤を買って良かったのは、サブ・タイトルに「スムース・ジャズ・クリスマス」と記載されていたこと。
最近よく目にするんだけど、スムース・ジャズって一度も聴いたことがなくて、いったいどんなジャズなのか知らなかったものですから。このCDを聴いて、ようやくスムース・ジャズなるものを知ることができました。ありがとう!
むかし昔、おれたちがフュージョンって呼んでいたジャンルのなかから、スウィング感のあるリズムと、ゴスペル、ブルース的な黒人音楽の臭いを抜いたものがスムース・ジャズだったのですね……って、そんなもんジャズと呼べるか、あほ!
(だから、怒らないでねって、最初にお断りしてたのに)
今回は、お洒落でかっこいいクリスマス・アルバムを紹介すると偽って、「私とCDのはかない人生」について書いてしまいました。ごめんなさい。
でも、どんな些細なことにも歴史が隠されているんです、それだけは忘れないでください。忘れてしまうと歴史は繰り返されるそうです。恐ろしや恐ろしや。
歴史といえば……
GRPは、デイヴ・グルーシンとラリー・ローゼンが 1976年に起こした西海岸のレーベルで、創設当時は、Grusin Rosen Productions の略で GRPでしたが、業界再編でグルーシンとローゼンが会社を離脱してからは Great Records Period に名称変更。現在は Verve傘下となり、ユニバーサル・ミュージックが販売業務をしております。
上記3部作は数年前に廃盤。再発売の予定なし。ユニバーサル企画のコンピレーション盤に収録されている曲も一部あります。
リトナー盤は、現役ばりばり新品で入手可能。
スムース・ジャズのリトナー盤はさておき、デイヴ・グルーシン&ラリー・ローゼンがプロデュースした『GRP クリスマス・コレクション』3部作は、フュージョン・アルバムの名盤です。中古盤をみかけたら速攻ゲットしましょう。モダン街道一本道の旅人さんには関係ないことでしょうが、フュージョン好きな方なら絶対お気に召すと思います。
次回は、本日到着した 2010年リリースの新譜4枚を含めたボーカル編を、支離滅裂にならないよう厳重な監視の下、お届けする予定です。