soe006 ナット・キング・コールをまとめて聴く(2)

ナット・キング・コールをまとめて聴く(2)

February 28 2011

ボーカル・ア・ラ・カルト

自己のピアノ・トリオを解散したナット・キング・コールが、1950年代前半、ネルソン・リドル楽団の伴奏で録音したキャピトル盤を紹介。

NAT KING COLE SINGS FOR TWO IN LOVE

NAT KING COLE SINGS FOR TWO IN LOVE
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ナット・キング・コール(vo)
ネルソン・リドル楽団

01 Love Is Here To Stay
02 A Handful Of Stars
03 This Can't Be Love
04 A Little Street Where Old Friends Meet
05 Autumn Leaves
06 Let's Fall In Love
07 There Goes My Heart
08 Dinner For One Please, James
09 Almost Like Being In Love
10 Tenderly
11 You Stepped Out of a Dream
12 There Will Never Be Another You

Recording Date: Jan 1953 - Aug 1955
Release Date: 1955
Capitol/Collector's Choice

THIS IS NAT "KING" COLE

THIS IS NAT
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ナット・キング・コール(vo)
ネルソン・リドル楽団

01 Dreams Can Tell Lie
02 I Just Found Out About Love
03 Too Young To Go Steady
04 Forgive My Heart
05 Annabelle
06 Nothing Ever Changes My Love For You
07 To The Ends Of The Earth
08 I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life
09 Someone You Love
10 Love Me As Though There Were No Tomorrow
11 That's All
12 Never Let Me Go

Recording Date: Jan 1953 - Jan 1956
Release Date: 1957
Capitol/Collector's Choice

独立後、ポピュラー・シンガーとして人気上昇中のナット・コールが、ネルソン・リドル編曲指揮のオーケストラをバックに歌っている2枚。
このころはまだ、過去のシングル盤のコンピレーションであったり、10インチ盤のリイシューとして12インチLPにまとめられていたので、再発盤(CD)では収録曲・曲順が、若干変わっていたりします。

『シングス・フォー・トゥー・イン・ラブ』は、1953-55年の録音。ガーシュウィンの名曲「わが恋はここに」を先頭に、「レッツ・フォール・イン・ラブ」、「テンダリー」など。ラブソングを甘く優しく歌って人気を獲得したナット・コールらしいアルバム。

「枯葉 オータム・リーヴス」は 1955年8月23日の録音で、マイルス=キャノンボールの『サムシン・エルス』(BlueNote/1958年3月)よりも前の録音。
ジャズのスタンダードというよりは、シャンソンの英語化カバーといった趣向でしょうか。
56年に製作された映画『Autumn Laeves』(ジョン・クロフォード主演)の主題歌としても使われています。英語の歌詞はジョニー・マーサー。

スウィートなラブ・バラードだけでなく「ジス・キャント・ビー・ラブ」、「オルモスト・ビーイング・イン・ラブ」など、快適にスウィングするナンバーも適宜入っていて、アルバム全体を通して聴いても厭きない構成。
アルバム単位でみた場合、このディスクはナット・コールのベスト5に入るんじゃないかと思います。
現行の Collector's Choice盤は、前回紹介した『シングス・バラッド・オブ・ザ・デイ』とカップリングされた 2in1のお得お用盤。

『ジス・イズ・ナット・キング・コール』は、1957年に 12インチLPでリリースされた、1953-56年録音のオムニバス盤。
余裕綽々な歌いっぷりで、ネルソン・リドルのオーケストラも快適。

そもそもネルソン・リドルが編曲・指揮したボーカル・アルバムにハズレはほとんどない。フランク・シナトラ(『スイング・イージー』など)、エラ・フィッツジェラルド(『ジョージ&アイラ・ガーシュウィン・ソングブック』など)、ペギー・リー(『ジャンプ・フォー・ジョイ』など)、リンダ・ロンシュタット(『ホワッツ・ニュー』など)。どれも名盤の名に値するものばかり。
歌手の資質に合わせているのか、歌曲の本質に忠実なのか。
この大御所が歌伴担当したアルバムからチョイスしてベスト・アルバムをコンピレしたら凄いものができそう。

ここまでは 40-50年代にリリースされていた SP盤やシングル盤、10インチ盤をリイシューしたオムニバスでしたが、『トゥ・フーム・イット・メイ・コサーム』は、1958年にステレオ録音、1959年5月リリースされたオリジナルLP盤。

Nat King Cole To Whom It May Concern

Nat King Cole To Whom It May Concern
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ナット・キング・コール(vo)
ネルソン・リドル楽団

01. To Whom It May Concern
02. Love-Wise
03. Too Much
04. In The Heart Of Jane Doe
05. A Thousand Thoughts Of You
06. You're Bringing Out The Dreamer In Me
07. My Heart's Treasure
08. If You Said No
09. Can't Help It
10. Lovesville
11. Unfair
12. This Morning It Was Summer

Recording Date: Jun 20, 1958 - Nov 12, 1958
Release Date: May 1959
Capitol

黒人なのに黒人らしからぬ歌唱のナット・コールとは反対に、白人なのに白人らしからぬパフォーマンスでR&Bを歌うエルヴィス・プレスリーが人気を得たのもこの頃。
時代を感じさせるバック・コーラスがなんとも香ばしい。
CDは 1995年に出たっきり廃盤ですが、MP3ダウンロード販売で購入可能。

今回はネルソン・リドル編曲・指揮のナット・コール盤を並べてみました。
最後に異色作を1枚。

NAT KING COLE ST. LOUIS BLUES

NAT KING COLE ST. LOUIS BLUES
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ナット・キング・コール(vo)
ネルソン・リドル楽団

01 Overture: Love Theme - Hesitating Blues
02 Harlem Blues
03 Chantez Les Bas
04 Friendless Blues
05 Stay
06 Joe Turner's Blues
07 Beale Street Blues
08 Careless Love
09 Morning Star
10 Memphis Blues
11 Yellow Dog Blues
12 St. Louis Blues

Recording Date: January 29, 30 & 31 1958
Release Date: 1958
Capitol/Collector's Choice

ご存知W.C.ハンディの半生をパラマウントが映画化(1958年)。
『セントルイス・ブルース』は、これにあわせてリリースされたナット・コールによるW.C.ハンディ作品集。
米国南部に伝わる黒人ブルースを大衆に知らしめた功績により「ブルースの父」 と呼ばれるウィリアム・クリストファー・ハンディ。演じるのは白人に抜群の人気を誇るナット・キング・コール。
出演は他に、アーサ・キット、マヘリア・ジャクソン、エラ・フィッツジェラルド、ルビー・ディー、パール・ベイリー、キャブ・キャロウェイ、ビリー・プレストンなど。

脚本は『バスター・キートン物語』のロバート・スミスと『放射能X』のテッド・シャーデマン。

監督はこの映画以外では名前を知られていないアレン・レイスナー。

音楽監督をネルソン・リドルが担当。

W.C.ハンディとナット・コールの共通点は、黒人であることと、生家が教会だったことくらい。
ストーリーはいちおうハンディ原作ということになっていますが、この当時製作されていた音楽家の伝記映画(『アメリカ交響楽』、『グレン・ミラー物語』、『ベニー・グッドマン物語』、『夜も昼も』などなど)と同様、事実無根の完全創作。
……ということで、ナット・コールの演技の稚拙さもあって、ハンディ死去の翌週に公開された(アメリカ公開は1958年4月7日、ハンディの死去は1958年3月28日)というのに興行はコケてしまいました。かなり以前にテレビ放映されたのを観ているはずですが、中身はさっぱり憶えてません。当時の映画ノートにも、作品名、監督名、出演者だけしかメモしていない。
日本はもちろんアメリカでも DVDは出ていないようで、まあ、その程度の出来です。
出演者がとっても豪華なので、いま一度観てみたい気もしますが。

映画のはなしはさておき……

アルバムの冒頭に映画のために作曲された「愛のテーマ」のオーケストラ演奏が「序曲」として収録されていますが、映画のサウンドトラック盤ではありません。
音楽担当のネルソン・リドルと主役のナット・コールで製作された、いわいる企画物。

W.C.ハンディ作品集ということで、ルイ・アームストロングのコロムビア盤(1954年7月録音)と比較してしまうのですが……やはりサッチモ盤は正統派、こちらは異端の作品集という感じが強いですね。
「セ・シ・ボン」だろうが「バラ色の人生」だろうが、なにを唄ってもジャズ色で塗ってしまうサッチモですから、W.C.ハンディのブルーズなんかもう完全に血肉化してしまってるわけで、対してナット・コールは「まるで白人のような」と揶揄されてしまうほどソフィスティケートされた歌手なわけで。とても勝ち目はありません。
白人歌手が余興で黒人の歌を唄っているようにしか聞こえません。
皮肉な逆転現象が起きてます。

ネルソン・リドルのハリウッド・スタイルなゴージャス・オーケストラをバックに、流麗優美なナット・コールの歌声で聴くW.C.ハンディも、甘いムードでオシャレだとは思いますが。

なおこちらのディスクも、現行の Collector's Choice盤は、1965年リリースの『ルッキング・バック』とカップリングされた 2in1盤です。

ボーカル・ア・ラ・カルト
ハリウッド:ザ・プッピーニ・シスターズ(2011年11月16日)
ナット・キング・コールをまとめて聴く(2)(2011年02月28日)
ナット・キング・コールをまとめて聴く(1)(2011年02月25日)
ザ・ベリー・ベスト・オブ・ナット・キング・コール(2011年02月20日)
キャロル・ウェルスマン:インクラインド(2011年02月08日)
ザ・プッピーニ・シスターズをまとめて聴く(2011年01月25日)

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