上映時間と比例するくらい、いろいろ、盛りだくさんに書こうと思っていたのだが。
いざ書こうとしたら……いまさら何を?
主役の二人(リチャード・ベイマー&ナタリー・ウッド)が瑕瑾で、特にナタリー・ウッド。歌の吹替えは(マーニ・ニクソンが素晴らしいので)、それはそれでいいんだけど、「アイ・フィール・プリティ」のダンスが、(他のダンスナンバーがとても素晴らしいので)はなはだしく見劣りする。部屋の中を走り回っているだけだもんなあ。何回観ても、このシーンを観るたびに彼女じゃなかったら、とため息ついてしまう。
細かいところでは色々あるけど……口笛とニューヨークの俯瞰ショットが重なって、ラス・タンブリンたち不良グループが指を鳴らして立ち上がり、対立しているプエルトリコ移民のグループがストリートを滑るように踊りだす、と……もうたまらん!
まず音楽! そしてダンス! それを捉えるキャメラ! 映像とリズムをシンクロさせた躍動感ある編集! リアルかつ機能的な美術セット!
1961年12月の日本公開から(家庭用ビデオが普及した)80年代半ばまで、映画館に「ウエスト・サイド」がかかると客席はいつも満杯になった。名画座の切り札的看板番組。
本作が大ヒットしたあと、ただひたすらに楽しいだけのMGMミュージカルが(その数年前から興行不振ではあったものの)完全に埋葬された。
以降、「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディ」、「ラ・マンチャの男」、「屋根の上のバイオリン弾き」。ドラマ重視のブロードウェイ・ヒットの映画化ばかり。
文芸的要素など不要。ただただ面白く愉快、明朗で洒落ていて素敵な、ゴキゲン気分にさせてくれる、その一点にのみにスタッフ&出演者が奉仕しているMGMミュージカルこそ、ミュージカル映画の王道だと断言しているおれだけど……
個人的に、オールタイム映画ベストテン候補の1本。
音楽は、映画のサントラ盤ほか、ブロードウェイ・キャスト版、オスカー・ピーターソン(Verve)、アンドレ・プレヴィン(Contemporary)、スタン・ケントン楽団(Capitol)、デイヴ・ブルーベック(Columbia)、リッチー・コール(Venus)などなど録音盤が沢山出ている。
普段よく聴くのは、バーンスタイン自身がロサンゼルス・フィルハーモニックを指揮したグラモフォンの「シンフォニック・ダンス」(これ書きながら今も聴いている)。バーンスタインの自作自演では、キリ・テ・カナワやホセ・カレーラスなど豪華キャストの録音盤も出ているが、オペラ風で立派すぎて、映画の(下町で不良どもが喧嘩している猥雑な)雰囲気が消えちゃってるのが残念。
スティーヴン・スピルバーグ監督初のミュージカル映画となるリメイク版(2020年12月公開予定)は、はたしてどうなりますことやら。
点