この映画が日本でパロディを流行らせた。これ以前にパロディという言葉はあっただろうけど、映画のジャンルとして定着したのは本作が公開されてから。
スター俳優不在、監督も無名、ロマンス要素もない、元ネタは戦前の古典怪奇映画、しかもモノクロ! 外国のコメディ映画は当たらない、それが日本の常識だった1975年10月に公開。アメリカで大ヒットしてなかったら、前作「プロデューサーズ」同様、日本未公開のままだったかも知れない。
ジョン・モリスの音楽が素晴らしい。美術セットが素晴らしい。撮影が、照明が、衣装が素晴らしい。演出も正統派。手間もお金もかかっている。
ジーン・ワイルダーとテリー・ガーのアップなど、クラシックなロマンス映画と見間違えそうなくらい(「哀愁」のロバート・テイラーとヴィヴィアン・リーみたいに)綺麗に撮れている。怪物(ピーター・ボイル)の憂いをたたえた表情は、オリジナルのボリス・カーロフを超えている。
フェイド・イン/アウト、アイリス・イン/アウト、ワイプ、ディゾルブ、回転ワイプなど、場面のつなぎもクラシックな手法で凝っている。
これだけ立派に作れるのだから、間の抜けたギャグとシモネタをごっそり抜いて、シリアスな怪奇映画としてリメイクしていたなら名作と呼ばれていたかも知れない。
後年、デヴィッド・リンチ監督で製作した「エレファント・マン」がそんな感じか。
個人的に、マーティ・フェルドマンのカメラ目線のギョロ目と、警部(ケネス・マース)の義手ギャグ(「博士の異常な愛情」のパロディだろ?)が許せんのだ。
入れるか外すかで脚本家(ワイルダー)と監督(ブルックス)が対立したという「リッツで踊ろう」は、入れて正解。
DVD特典に入っていた1996年製作のドキュメンタリーによると、家政婦ブルッハー夫人の右顎のイボは、演じたクロリス・リーチマンのアイディアによるメイクだったそうで、これはもう完全に「レベッカ」のダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)を狙ってたってことで、それはもう見事に成功している。彼女はヒチコック・パロディの「新サイコ」でも同じような役を演じていた。
ジーン・ワイルダーの口髭がカット毎に違うのは、笑いを狙ってのことなのか、単なるミスなのか分からない。初めて観たときから、どっちだろうって、ずっと気になってる。
マデリン・カーンが絶世の美女に見えるカットが、ときどきある。
テリー・ガーは全編かわいい。
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