栄光のル・マン|映画スクラップブック


2020/06/26

栄光のル・マン

栄光のル・マン|soe006 映画スクラップブック
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LE MANS
1971年(日本公開:1971年07月)
リー・H・カッツィン スティーヴ・マックィーン ヘルガ・アンデルセン ジークフリート・ラウヒ ロナルド・リー=ハント リュック・メランダ フレッド・アルティナー

パリの南西部にある田園都市ル・マンで開催される24時間耐久レースを、前日の早朝から翌日夕方のレース終了まで、まるごと描いたカーレース映画。
1970年に開催されたル・マンのドキュメント映像と、映画のストーリー用に撮影されたフィルムを巧妙に編集し、あたかも本物のレースのような臨場感を創出。寡黙なレーサー(スティーヴ・マックィーン)の人物像もしっかり描かれ、ミシェル・ルグランの音楽も素晴らしく、実際に現地でル・マンを観戦した気分を味わえる。
観終わったあとの爽快感は筆舌に尽くし難い。カーレース映画の白眉。

F1グランプリを題材にしたジョン・フランケンハイマーの「グラン・プリ」が先行したため、一度は企画を断念したスティーヴ・マックイーンが、舞台をル・マンに変更し、マックィーン自身が設立したソーラー・プロダクションで製作。自らハンドルを握りアクセルを踏んだ。命とお金を注ぎ込んだ野心作。
ストーリー性が希薄という理由からジョン・スタージェス監督が降板したあと、TV出身の新人リー・H・カッツィンを監督に立て、妥協なしで、ほとんど自分の思うがままに製作をすすめた。
息を呑む迫力のレース場面はもとより、メカニック、観客、ル・マンの田園風景、雨に煙るサーキット、隣接して設けられた遊園地、事故に対応する救護スタッフ、優勝を賭けて競い合うポルシェとフェラーリ、チェッカー・フラッグが振られたあとの大歓声、などなど。レースと関わりのないドラマを極限まで刈り込んで大成功、カーレース・ファンは随喜の涙をながした。

大会当日の早朝、前日から泊まり込みで来ていた老若男女がテントやキャンピングカーから姿をあらわし、普段は乗降客が少なそうな田舎の駅に列車が到着するとホームが人で埋まる、田園地帯の2車線道路は長蛇の渋滞。祝祭の雰囲気が街がいっぱいに溢れてくる。
この風景スケッチの気持ちの良いこと。
警備や交通整理の警官隊が出動。レースのスタート時刻が近づくにつれ、少しづつ確実に、緊張感が高まる。

レース終了後「また2番だったぜ」と、2本指を立てるマックィーンが格好いい。

マックィーンは、負けてなお闘志を燃やし続ける不屈の男を演じて様になる。「大脱走」もそうだったし、「シンシナティ・キッド」でも最後の勝負に負けていた。
当時なにかと比較されていたポール・ニューマンは、逆に、「ハスラー」や「レーサー」で、最後に勝利するものの、勝負の虚しさを胸中に抱いて去ってゆく役柄を演じることが多かった。

ちなみに、この映画をむかし佐賀グランドで観たとき(シネラマではない、通常のワイドスクリーンでの再映)、隣席で観ていた当時小学生だった弟が、とつぜん鼻血を出し慌てて洗面所に駆け込んだ。映画がもたらした興奮かチョコレートの食い過ぎか、いまもって原因不明。映画が大好きで、市内の映画館まで片道7キロ自転車を漕いで、一緒によく映画を観に行っていた。「栄光のル・マン」を観るたびに、20歳で交通事故で死んだこの弟のことを思い出す。

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