これぞアメリカ!
(山田宏一氏を真似て書けば)アメリカ的な、あまりにもアメリカ的なアメリカ映画。
トム・ウルフのノンフィクション原作を監督自身が脚色、「ブレードランナー」「アウトランド」のラッド・カンパニー(アラン・ラッド・Jr)が製作した超大作。
それまで地味な、あまりにも地味な実録西部劇「ミネソタ大強盗団」でしか知らなかったフィリップ・カウフマンゆえに、ほとんど期待もなく観に行って、びっくり感動してしまった。マイ・フェバリット・アメリカ映画の1本。
ビデオ(当時はレーザーディスク)も発売と同時に購入。これでまたびっくり。
日本公開版は2時間40分の短縮版(米国でコケたせいだろう)で、ビデオ・リリースされたものは3時間13分のノーカット版だった!
(その後、午前10時の映画祭でもノーカット版が上映されている)
チャック・イェーガーが超音速飛行に成功した1947年から、第一次宇宙計画(マーキュリー計画)が終了する1963年までが描かれる。
アメリカ宇宙航空史・黎明編といった感じの実録群像劇。
テーマはアメリカ万歳、国威発揚、はっきりプロパガンダなのだが、7人の選ばれし宇宙飛行士たちの訓練や私生活、彼らの奥さんたちのエピソードが興味深く、国家(政治)とマスコミが結託して計画を推進させる様子も批判的な視点から捉え、宇宙開発計画の全体像が公平に、丁寧に描かれている。
ジョン・グレンを演じたエド・ハリスは、(多分)そっくりさんという理由からキャスティングされたのだろうが、本作で俄然注目されてこのあと大活躍。
マーキュリー計画と並行して描かれる孤高のテストパイロット、チャック・イェーガーを演じたサム・シェパードがかっこいい。若き日のクリント・イーストウッドをちょい甘くした感じ。彼と奥さん(バーバラ・ハーシー)の関係がまたいい。
記録フィルムを交えたプロジェクト再現場面のスケールは大きく、リアルかつ迫力満点。
それをビル・コンティの音楽が(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲やホルストの組曲「惑星」を引用しつつ)さらに盛り上げる。
何度見ても面白いし、何度見ても興奮するし、何度見ても感動する。
おれとの相性がすこぶる良い映画。
2枚組DVDには、77歳でスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し最年長宇宙飛行士の記録をつくったジョン・グレンの特別番組や、製作当時を振り返るスタッフや出演者のインタビューが付録についている。それを見れば、この映画が公開時になぜ不当たりだったのか理由がわかる。
マーキュリー計画の宇宙飛行士たちは政治とマスコミによって世間の人気を得たが、映画は政治とマスコミによって観客に嫌われた。立役者となったのは、どちらもジョン・グレンだったとは皮肉なものだ。
点