ディノ・デ・ラウレンティスが巨額の製作費を投じたリメイク版。
オリジナルが密林冒険映画の流れで企画されたのに対し、1976年度版はその時代を反映し、野生動物保護キャンペーンみたいなストーリーになっている。
公開前はコンピュータ制御の実物大コングが宣伝され話題になったが、実際は(ニューヨークのショウ場面で)数秒程度しか出てこない。
ほとんどの場面が、リック・ベイカーによる着ぐるみ(ベイカー本人が実演)とミニチュア・セットで撮影されている。これが素晴らしい出来で、コングの喜怒哀楽を表情豊かに表現、否応なく感情移入させられる。
精密なミニチュア・ワークを売り物としていた東宝が「空の大怪獣ラドン」や「モスラ」あたりをピークに、特撮予算をケチっているあいだに、ハリウッドの技術は凄まじい勢いで進歩していた。光学合成なんかも「キングコングの逆襲」と比べると雲泥の差。
俳優たちのリアクションが、合成された特撮ときれいにシンクロしているので違和感なくみられる。コングの掌に握られたヒロイン(ジェシカ・ラング)の動きは、計算され見事にマッチしている。コングが頬を膨らませ息を吹きかける滝の場面が出色。
濃霧の海に未開の島が現れる場面も素晴らしい。
本作が映画デビューだったジェシカ・ラングは、素直で天真爛漫、ちょっと間抜けな可愛いブロンド美女、つまりコメディ映画のマリリン・モンローを演じている。公開当時はセクシーなだけのモデルあがりが素人芝居しているように思っていたが、これが「素」ではなく「演技」だったことを、その後の彼女のキャリアで知ることになる。
対して男優陣は、ジェフ・ブリッジスもチャールズ・グローディンも精彩を欠く。
曲者エド・ローター(ハリウッドの成田三樹夫?)も見どころないまま、丸太橋から墜落死。こんな誰が演じてもいいような端役、出なくてもいいのに。
孤島でコングと格闘するのが大蛇だけというのが(怪獣好きには)寂しいが、特撮ロマンス映画として上出来。ジョン・バリーの音楽もいい。
東宝東和が輸入した日本公開版は134分。現在流通しているユニバーサル・ジャパン販売のDVD(STUDIO CANAL制作なので翻訳字幕がよろしくない)は、北米公開版の129分。カットされた(ジェシカの船室を窓から覗いていた乗組員が海に落とされる、などの)シーンは、特典映像に入っている。
いまとなっては複雑な気持ちにさせる、月明かりに浮かぶ世界貿易センタービル。
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