アメリカ中央情報局の下部組織アメリカ文学史協会に勤務する職員が、正体不明の男たちに皆殺しにされる。当日の朝、雨が降っていたので裏口から昼飯の買い出しに出ていたレッドフォードだけが偶然命拾いし、状況がわからないままNYCを逃げ回る。
CIAの内部で陰謀が錯綜しているらしく、誰が味方か敵かわからない。上層部でも情報が把握できていない様子描かれ、主人公と観者を混乱させる。上司に身柄の保護を頼んだレッドフォードは待ち合わせ場所でいきなり命を狙われ、元同僚だった男は殺され、その殺人容疑者として警察からも追われる身となる。
ここまでは(デイヴ・グルーシンのカッコいい音楽効果もあって)強烈に面白かったのだが……。
事件に巻き込まれた主人公が偶然出会った女性を巻き込み、一緒に事の真相を探る流れは、ヒッチコック映画でもお馴染みの展開。本作でも逃げ込んだ店でたまたま出会った写真家の女性(フェイ・ダナウェイ)を強引に拉致して、真相解明の協力者にしてしまう。いきなり銃を突きつけられ縛られ脅迫された一般女性が、一夜のベッドを共にしただけでボンドガールなみの活躍をみせる荒唐無稽な展開は、レッドフォード&ダナウェイのスター映画ならでは。
フェイ・ダナウェイは、頬骨が張り眼光キツくて冷たい印象が好きになれない女優さんだったけど、この時期の出演作では、いちばん綺麗に撮られている。駅での別れの場面が、思いっきりメロドラマっぽい。事件に深く関与した女をCIAがこのまま放って置くわけもなく、このあともずっと監視され口封じに殺される危険もあるのだが、脚本家はそこまで頭がまわらない。
レッドフォードが電話局に潜入して、盗聴の逆探知を混乱させる場面があるけど、そんな知識(そこにそれが出来る装置があることを含め)どこで仕入れてたんだ? ご都合良すぎで笑いも出ない。
ラストでレッドフォードは、真相をマスコミにリークするぞとCIAのクリフ・ロバートソンを脅すが、そんなものは簡単に握り潰せると返される。
そもそも職員を全員殺してでも隠さねばならない重大事(中東で石油利権をめぐっての工作活動がばれる)だったのか?
アメリカ映画に登場するCIAは、常に悪い組織として描かれる。世界中の情報を収集し、国家を左右する策略を秘密裏に企む。非合法な殺人も平然と行い証拠は隠蔽され、政府高官さえ実態を掌握していない謎の悪組織。ジェームズ・ボンドのMI6も同じようなことやってるのに、CIAはとことん嫌われている。
コーエン兄弟の「バーン・アフター・リーディング」ではさんざん莫迦にされ茶化されていた。
OCR(光学式文字読み取り装置)とかCOMPACのパソコンとか、映画に出てくる70年代のハイテクが興味深い。
竣工したばかりの世界貿易センタービルも舞台になっている。
クリフ・ロバートソンの目つきはハーベイ・カイテルに似てる。
製作はディノ・デ・ラウレンティス。
スタジオカナル制作のDVD日本語字幕は評判が悪い。本作の字幕も最低。
点