それで、映画音楽なんですが

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それで、映画音楽なんですが

May 27, 2006

「映画を観ている最中は音楽が流れていることを意識しないような音楽が、最高の映画音楽」と、仰ってる方がいらっしゃいます。

そうかも知れないけど……私の場合は違います。

映画館を出てからも、メロディなり、リズムなりが、いつまでも脳裏にこびりついて離れず、頭の中をグルグル駆け巡り、歩調にあわせて何度もしつこく反復、ついレコード屋に足を向けてしまう……これが、私にとっての「良い映画音楽」。
「パピヨン」、「ブレージング・サドル」、「ジョーズ」、「華麗なるヒコーキ野郎」、「タクシー・ドライバー」、「カッコーの巣の上で」、「バリー・リンドン」、「ロッキー」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」……どれも音楽が映画を代弁するように、強烈な印象を残しています。
12音やポリリズムを多用した、平易に口ずさめないようなメロディでもいいんです。有名なクラシックのパクリもけっこう。激しいアクション映画に美しいメロディでも、その逆でもオッケーです。どうしようもなく退屈な映画でも、音楽がいつまでも印象に残っていることがあります。
これが、私にとっての「良い映画音楽」(映画音楽の効用)。

前も少し書きましたけど、DVDがCDの半値で売られている現状で、サントラ盤の存在意義なんて、ほとんどありません。
映画のために作曲したものだから音楽だけ切り離して聴かれても困ると仰る音楽家も多いですし、確かに映画と別個に聴いたら面白くもなんともないものが多いのも事実です。
つまり映画音楽は、映画全体を構成する一つの要素であって、それ以上でも以下でもない、ってことでしょう。
まったくそのとおりだと思います。

サントラ盤も、ずいぶん買いました。いろいろ聴きました。
子供のころは家庭用ビデオなんか夢のような時代でしたから、最初は好きな映画を所有していたい、保存したい、ってことで買い集めていました(……これ前にも書いたっけ?)。
いろいろ聴いていくうちに、好きな作曲家が出てきて、映画が公開される前に買ったり、まったくの未公開映画や、絶対に目にすることは叶わないと分かっている古い映画のサントラ盤も買うようになりました(絶対に観られないと諦めていた映画も、次々とビデオ化さましたが)。映画とは関係なく、サントラ・レコードを買うようになっちゃったんですね。
そんなことやってるうちに、映画と所有しているサントラ・レコードとが、完全に分離しちゃって、映画は映画、サントラ盤はサントラ盤と分けて考えるようになりました。
つまり、映画のサウンドトラックに記録されている音楽と、いま手元にあるレコードは別物なんだから、同列に置いちゃいけない、ってことに気付いたわけです。
それにほとんどのレコードは、オリジナル・サウンドトラック・レコーディングと名乗っていても、サウンドトラックとは別に録音したものですし。例え同じ音源であったとしても、映画のサウンドトラックに収録してある音楽は、シーンに合わせて途中でカットアウトされたりフェイドアウトされたり、セリフや効果音との兼ね合いで、音量が大きくなったり小さくなったり、レコードとは異なるミキシングが施されているし。なによりも、映画とまったく同じ音楽が聴きたいのであれば、安いDVDが売られているんだから、それを観ればすんでしまう。
作曲家だって、それを望んでいる。

完全収録の海賊盤? あほか!

……ということで、映画音楽は、映画を観たときに背景に流れている音楽(つまり劇伴)。サントラ盤はCDというパッケージに収録された別の音楽(商品)、というふうに分けて考えるようにしたのです。
それで、なんとなく、今までのモヤモヤがすっきり晴れたような気がします。
「私の映画音楽を劇伴と呼ぶな」って言った作曲家もいますが、話がややこしくなるので、ここでは黙殺。

話は唐突に変わりますが……対位法ってやつがあります。
楽典でいうところの、「複数の独立した旋律を組み合わせた作曲法」ではなく、映画音楽としての対位法。
例えば、激しい戦闘場面のバックに穏やかなメロディの民謡を流し、逆に緊張感とか残酷さなどの劇的興奮を観客に与える方法のこと。
ストーリーによっては、主人公が故郷に残した恋人のことを考えているのだな、とか観客に連想させたりもできます。
オリバー・ストーンの「プラトーン」では、サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」を使ってましたけど……あの曲がジョン・F・ケネディ大統領の葬儀のときに流れていたことを知っていた人なら、「ケネディが殺されなければ、米国がベトナム戦争に介入することはなかったのでは? こんな悲劇は起きなかったのでは?」とか、そういう(映像やセリフではまったく説明されていなかった)ことまで連想されたんじゃないでしょうか。巧い使い方だと感心しました。
でも、映画を観ていない人が聴いても、「弦楽のためのアダージョ」は感動的な音楽なんですね。

もともと映画のために作曲された音楽じゃないから、当然と言えば当然なんですけど……しかし、この映画を観てしまってからは、「弦楽のためのアダージョ」を聴くたびに「プラトーン」を思い出しちゃって困るんですよ。
同じようなことは「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭部分や、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」でも起こります。「ラプソディー」を耳にすると条件反射で、つい「チャプター、ワン……」って呟いてしまうんですね。
こういうのは一種の病気のようなものですから、どうでもいいんですけど。

そうじゃなくて、ここでハッキリ言っておきたいのは……
長くなってので、また今度。

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