「世界は愛であふれている」
プロローグとエピローグに、ヒースロー空港のロビーで再会を喜びハグする人々の姿。
「19人の男女が織りなす9通りの様々な愛の形」とビデオ・パッケージに書かれている。リチャード・カーティスの脚本は脇キャラが濃いから、もっといっぱい出ているような気もする。
ロック・スター(ビル・ナイ)の間抜けなクリスマス・ソング。渡米でモテモテのクリス・マーシャル。英国首相(ヒュー・グラント)とメイド(マルティン・マカッチョン)は「ノッティングヒルの恋人」の男女逆転ヴァージョン。
米国大統領(ビリー・ボブ・ソートン)のキャスティングは、それだけで爆笑もの。エマ・トンプソンとジョニ・ミチェル(「青春の光と影」の新録音CD)、障害者の弟の面倒を見ているローラ・リニーの辛口エピソードが入っているのもいい。
裸でカラミの演技をしている若い男女(マーティン・フリーマンとジョアンナ・ペイジ)はポルノを撮影しているのではなく、大作映画のスタンドイン(ボディダブル)だと、DVDの音声解説で監督が喋っていた。
そして、アラン・リックマン! この人の声が好きだ。この人のセリフはシェークスピアの朗読のように深い。こんな素晴らしい声を聞かないなんて、日本語吹替で映画を見る人の気が知れん。
本作はカーティス本人が監督(初監督らしい)しているので、人物描写が(「ブリジット・ジョーンズ」などと比較したら)とても丁寧。
それぞれのエピソードはシンプルかつ月並みだけど、巧みな構成とバッチリ決まった配役と的を射たポップスBGMの選曲で、見終えたあとはほんわか幸福感に満たされる。クリスマスに絞り込んだ時間設定が決め手。パッチワークの妙技。繋がっているような、そうでもないような、その匙加減が丁度いい。群像劇の秀作。
点