フランスの田舎町で産婦人科医を誹謗する怪文書がばら撒かれる。「カラス」と署名された手紙の主を巡って猜疑心が錯綜するなか、騒ぎは町中に拡散し自殺者まで出る。
人間心理の暗部をサスペンスフルに描いたクルーゾー・スリラーの原点。
ドイツ軍占領下で製作されたオリジナルは(時代からして当たり前だけど)スタンダード・サイズ。ユニバーサル・ジャパンが販売しているDVDは、上下をトリミングしたビスタサイズ収録。
点
2022/06/09
LE CORBEAU
1943年(日本公開:1950年11月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー ピエール・フレネー ピエール・ラルケ ミシュリーヌ・フランセ エレナ・マンソン ジネット・ルクレール シルヴィー ロジェ・ブラン ジャン・ブロシャール
フランスの田舎町で産婦人科医を誹謗する怪文書がばら撒かれる。「カラス」と署名された手紙の主を巡って猜疑心が錯綜するなか、騒ぎは町中に拡散し自殺者まで出る。
人間心理の暗部をサスペンスフルに描いたクルーゾー・スリラーの原点。
ドイツ軍占領下で製作されたオリジナルは(時代からして当たり前だけど)スタンダード・サイズ。ユニバーサル・ジャパンが販売しているDVDは、上下をトリミングしたビスタサイズ収録。
点
2022/06/08
L'ASSASSIN HABITE AU 21
1943年(日本公開:1948年12月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー ピエール・フレネー シュジー・ドレール ジャン・テシエ ノエル・ロクヴェール ピエール・ラルケ オデット・タラザク
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー第1回監督作品。
ドイツ軍占領下のパリにてドイツ資本のコンチネンタル・フィルムが製作。スタニスラス=アンドレ・ステーマンの原作小説をクルーゾーとステーマンが脚色している。
宝くじで大当たりを獲った男が深夜の路上で「ムッシュ・デュラン」を名乗る連続殺人鬼に殺害される。
犯人の手掛かりを掴んだピエール・フレネー警視は牧師に変装。
モンマルトル21番街の安宿「ミモザ館」で潜入捜査を開始。
そこへ彼の恋人で歌手のシュジー・ドレール嬢も好奇心たっぷりにやって来て。
からくり人形作りの職人、ワケアリの元軍医、試合の事故で視力を失った元ボクサー、妙に色っぽいその看護師、お調子者の奇術師、売れない女流作家、声帯模写が得意な使用人。ユーモアたっぷりに紹介される「ミモザ館」の住人(容疑者たち)は、まるでフランク・キャプラ「我が家の楽園」みたいにエキセントリックな曲者揃い。
容疑者が逮捕されたあと、警察の尋問中に別の殺人事件が発生し、住人たちは全員アリバイが成立。さて真犯人は誰か、謎解き推理の興味も入って最後まで面白い。
残酷な殺人事件を扱っていながら、後のクルーゾー作品からは想像し難い、ライトなロマンチック・コメディ・スタイルのサスペンス・スリラー。
第1回監督作品とあって、ぎこちないところも多々見受けられるものの、本場フランスのアプレゲールを体現するシュジー・ドレール嬢の好演が楽しく魅力的。
本作の歌唱は吹き替えでなくすべてドレール嬢本人によるもの。ダンサー、歌手としても活躍していただけあってとても上手い。後年、彼女が歌う「セ・シ・ボン」を気に入ったルイ・アームストロングは同曲をサイ・オリヴァー楽団の伴奏で録音。
いまではサッチモ版のほうがスタンダードになっちゃってる。
点
2022/06/09
QUAI DES ORFEVRES
1947年(日本公開:1949年07月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー シュジー・ドレール ベルナール・ブリエ シモーヌ・ルナン シャルル・デュラン ルイ・ジューヴェ
パリのショービジネス界を舞台にした倒叙ミステリ。
「犯人は21番に住む」の歌姫シュジー・ドレールを再び起用。
彼女の歌唱をたっぷり取り入れながら、ジョルジュ・クルーゾー監督の卓越した映画話術とルイ・ジューヴェ警部が殺人事件を追う。
男女の三角関係を、すれ違いの連鎖でみせるあたり巧いものだ。
点
2022/06/15
MANON
1948年(日本公開:1950年09月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー ミシェル・オークレール セシル・オーブリー セルジュ・レジアニ ガブリエル・ドルジア ミシェル・ブーケ
マルセイユから出港したパレスチナ行きの貨物船。若い男女の密航者。
男が指名手配されているロベールと分かり警察に通報しようとする船長に、ロベールは自分たちの過去を語り始める。
アベ・プレヴォーの古典文学「マノン・レスコー」を、終戦直後の混乱するフランスに移して翻案。安住の地を求めパレスチナへ密航するユダヤ難民と絡ませて描いた、ダークで硬質なメロドラマ。
セシル・オーブリーのルックスが愛くるしいだけに非情無情なラストが凄絶。
点
2022/06/19
LE SALAIRE DE LA PEUR
1953年(日本公開:1954年07月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー イヴ・モンタン シャルル・ヴァネル ペーター・ヴァン・アイク フォルコ・ルリ ヴェラ・クルーゾー ウィリアム・タッブス
ウルグアイの南部ラス・ピエドラス。
フランス、イタリア、ドイツから絶望の地に流れてきた男たちが、トラックに山積みされたニトログリセリンを多額の報奨金目当てに搬送する。
走路に幾つもの難関を用意した物理サスペンスと、極限状況の緊張から感情がむき出しになる心理サスペンス。ハイブリッドなスリラー。
紙巻き煙草の葉が爆風で吹き飛ぶ場面や、トラックが崖から落下する場面など、後世の映画に与えた影響は多い。
スピルバーグは絶対参考にしているはず。
極端なクローズアップ・ショットをつないで煽るジョルジュ・クルーゾーの意地悪。
点
2022/06/20
LES DIABOLIQUES
1955年(日本公開:1955年07月)
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー シモーヌ・シニョレ ヴェラ・クルーゾー ポール・ムーリス シャルル・ヴァネル ジャン・ブロシャール
パリ郊外にある寄宿学校。
女教師ヴェラ・クルーゾーは、夫で校長のポール・ムーリスに虐げられていた。その理不尽な扱いに堪りかねた同僚教師で夫の愛人シモーヌ・シニョレは、共謀して殺害しようとヴェラを唆す。
疑心暗鬼、人間不信、怪奇現象。ヒロインを執拗に追い込む心理サスペンス。
極端なクローズアップ・ショットに釘付けになる。
陰湿で狡猾なジョルジュ・クルーゾーのダークな映画術。
点
映画採点基準
80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません
個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません