西部の男|映画スクラップブック


2020/04/23

西部の男

西部の男|soe006 映画スクラップブック
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THE WESTERNER
1940年(日本公開:1951年01月)
ウィリアム・ワイラー ゲイリー・クーパー ウォルター・ブレナン フレッド・ストーン ドリス・ダヴェンポート

名匠ウィリアム・ワイラー監督の西部劇といえば、まず誰しも挙げるのは「大いなる西部」だろう。牧場主の一家が開拓地の水源を巡って争うシリアス・ドラマだった。

だから本作も、農地を荒らす牛の侵入を封じためる鉄条網を作った農民たちと、柵を壊し銃で農民を威嚇するカウボーイたち、誤って牛を撃ち殺し絞首刑になる農民、その判決を独善的にくだす判事ロイ・ビーン(ウォルター・ブレナン)と、序盤の状況説明をみて「大いなる西部」と同じテーマを持った映画ではないか、と思っていたのだが……

馬泥棒の容疑者としてゲイリー・クーパーの流れ者が登場したあたりから、映画は風変わりな、オフビート喜劇っぽいタッチになる。

クーパーを追うブレナンの馬が墓標を蹴飛ばしたタイミングで、わざわざコミカルな効果音(ピャン)を付けてることから、笑いを狙った映画であることは明白。酔いつぶれて抱き合ったまま朝をむかえたクーパーとブレナンの芝居は、あきらかに喜劇だ。勝ち気な農家の娘(ドリス・ダヴェンポート)から歌姫の髪をいただこうとする場面なんか、ロマンスコメディの典型。なのに……

クーパーのとりなしで和解したかに見えた牧場と農家だったが、収穫前のお祭りで農民たちが浮かれている最中、カウボーイたちはトウモロコシ畑に火を放ち、住居や小屋まで焼き払い、娘の父親を殺してしまう。この仕打に怒りをおぼえたクーパーは、副保安官のバッジを胸に、無観客の劇場でブレナンを待ち伏せ、対決する。
素性の怪しい住所不定の流れ者を、そんな簡単に副保安官に任命できるのものなのか? でもロイ・ビーンだって判事だもんな。そんな時代だったんだろう。

それぞれの場面はワイラーらしく丁寧に撮られている。おかしい芝居はおかしいし、迫力もあり、怒りもあり、役者は端役にいたるまでそれぞれに味が出ていた。ウォルター・ブレナンはアカデミー助演賞を受賞。これはワイラーの功績だろう。

ドリス・ダヴェンポートは、「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラ役のオーデションで、最終候補に残っていたという。だから家を焼失し父親を殺され農民たちが去ってゆくなかで、あのセリフ、あの演技があてがわれたのだろうか?

支離滅裂な脚本、どっちつかずの演出、これがサミュエル・ゴールドウィン&ウィリアム・ワイラーの仕事とは信じられない。それぞれの場面は丁寧に撮られているだけに、錯乱していたとしか思えない。

60

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