「教授と美女」と「ヒット・パレード」
April 15, 2003
去年BSで録画していた「白雪姫と七人の小人」のヴァリエーション、『教授と美女』と『ヒット・パレード』を連続で観る。
ハワード・ホークスの小技を堪能。やはりワイルダーは恋愛の転がし方が上手い。
しかし、洗濯物のズボン、ここまでやるのはどうだろう? すごい冒険だったと思う。
観たことない方にお教えししよう。こんな場面だ。
まったく女っ気のない大きな屋敷で、年老いた教授たちが百科事典(または音楽史)の編纂をしている。そこへ若くて美しいクラブ歌手が、悩殺のステージ衣装のまま転がり込む。
或る事情で自分のアパートに帰ることが出来ない彼女に、興味津々の教授たちは部屋を与え、一夜が明ける。もちろん誰一人として彼女にちょっかい出した者はいない。ちょっかいは出さなかったが、他のモノを出したらしい。汚れたズボンが台所にあったと、恐いおばさん家政婦が怒っている。
白雪姫のパロディ小咄に、こんな後日談がある。
小屋で共同生活していた白雪姫と七人の小人。王子様が現れてハッピーエンド。だけど将来お后になられる王子様のお相手が、アバズレでは困ります。結婚前に白雪姫の純潔を調べることになりました。医者は白雪姫の脚をグイと開いて股ぐらに顔をツッコミ、奥の奥まで念入りに調べてみた。「うん、大丈夫、処女膜は安泰ぢゃ」……でも拡大鏡でよ〜く見てみると、ポツポツと小さな穴が7つ、空いていましたとさ。
あと、字幕では「アバズレ」と翻訳されていたのが「Tramp」。ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲の「Lady is a Tramp」って曲がありますが、これがあのトランプです。
アニタ・オデイ:レディ・イズ・ア・トランプ
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Verve盤のアニタ・オデイが感じのいいトランプぶりを発揮していて推薦盤です。このレコードにはポーターの「Love for Sale」も収録されていて、これもイイ。アニタって天性の娼婦声だなぁとつくづく思う。
製作時のエピソードが気になったので、ホークスのインタビュー本『監督ハワード・ホークス「映画」を語る』(青土社)を引っ張り出して、ちょいと拾い読みする。
ゴールドウィンってずいぶんイヤ〜ンな紳士だったみたいだ。
自分を芸術家だと勘違いして、あれこれ口出ししてくる製作者は日本にも多い。
ホークスは生粋の職人肌だから、ソリが合わなかったんだろうな、やっぱり。
この本は(訳がヒドイけど)、映画を面白くするためのヒントが沢山載っていて、アイデアに詰まったときなどに読むと気分が楽になる。
あと『ヒット・パレード』のほうの主役、ダニー・ケイが女性下着を穿いていたとか……いろいろ勉強になりますです。
ついでに『ビリー・ワイルダー・イン・ハリウッド』(日本テレビ)も拾い読み。
『教授と美女』のギャラを誤魔化されたワイルダーは、愛想をつかして、以後、ゴールドウィンの仕事は一切していない。再映画化の際も脚本にはタッチしていないらしい。巻末のフィルモグラフィーにも『ヒット・パレード』の記述はなかった。
でもキチンと映画のタイトルにクレジットしているところが、やっぱり紳士のゴールドウィン。
(ワイルダーの脅しが利いていたのかな)