アーサー・ヘイリーのベストセラー小説をオールスター・キャストで映画化。
1970年代パニック映画ブームの火付け役となったサスペンス大作。
猛吹雪に見舞われたアメリカ中西部イリノイ州リンカーン空港。大型旅客機の着陸失敗で主要滑走路が使えなくなる。その対応に追われている最中に、騒音迷惑の住民デモがあったり、密航常習のばあちゃんが保護されたり、不倫妻との決別があったり、浮気していた客室乗務員から予期せぬ妊娠を告げられたり、ローマ行きのボーイング707機に爆弾を持ち込んだ男がいると通報があったりする。
前半1時間はグランドホテル形式の人間模様。空港のジェネラル・マネージャー(バート・ランカスター)と妻のダナ・ウィンター、旅客係ジーン・セバーグ。機長のディーン・マーティンと客室係のジャクリーン・ビセット。滑走路復旧作業にあたる保安主任ジョージ・ケネディ。密航常習婦人ヘレン・ヘイズ。爆弾を仕込んだアタッシュケースを持ち込むヴァン・ヘフリンとその妻モーリン・スティプルトンなど多彩な人物が登場。
もたつかないように、横に長ぁーいシネスコサイズ(トッドAO)を画面分割してワイプするなど、編集に単純な工夫が凝らされているのが面白い。
中年カップルの不和、不倫エピソードが2組あるのはしつこい気がする。ディーン・マーティンの浮気は、もはやギャグとしか思えない。そう言えばランカスターも「地上より永遠に」で同じような不倫男の役をやってた。ふたりの配役はギャグだ。
1932年「戦場よさらば」でゲイリー・クーパーの相手役を務めたこともある往年の美人女優ヘレン・ヘイズ。どことなく品がありお茶目なおばあちゃんが愉快で可愛い。
自らスコップを持って雪かきに精出すジョージ・ケネディが頼もしい。
ローマ行きの搭乗が1時間遅れで始まり、旅客機が離陸してからの後半はスリリングで目が離せなくなる。
爆弾爆発前後のサスペンスが巧い。ここまできっちりした構成の脚本、編集は、最近の映画ではなかなかお目にかかれない。短いショットをごちゃごちゃ繋ぎ合わせて、音楽と効果音で誤魔化してる安物とは格が違う。
ほとんどセリフがない爆弾男のヴァン・ヘフリンは適役好演。
その奥さんを演じていたモーリン・スティプルトンがとても良い。大衆食堂で働いている生活感、空港で夫を探す焦燥感、旅客機が飛び立ったあとの虚脱感、事故機から降りてくる人たち一人ひとりに狂ったように謝っている姿。このキャラクター、この演技があって本作はドラマの風格が増した。
ランカスターやディーノはストーリーの進行役、客寄せキャスティングだな。
前半のメロドラマがダサいとか、空港のセキュリテイが甘いとか、ストーリーがご都合主義だとか、特撮に迫力がないとか、50年前の映画に現代の感覚でケチつけるのは野暮。
監督はハリウッドの職人ジョージ・シートン。本作と「三十四丁目の奇蹟」が代表作。どちらも冬の話。雪を撮るのが得意なんだろう。
躍動感に満ちた格好良いタイトルバックの音楽は巨匠アルフレッド・ニューマン。たしかこれが遺作だった。
娯楽大作は作家性が希薄だからと敬遠する人もいるけど、おれは大好き。莫大な製作費を回収するため、より多くの大衆に観てもらうため、いろんな知恵と工夫が凝らされている。
点