J.S.バッハ ストコフスキー編
August 21, 2006
このところ映画音楽(サントラ盤)にご無沙汰だったので、インターネット通販のアマゾンで気になるサントラCDを次々とショッピングカートに放り込んでいたら、アッという間に合計が10万越えまして……なんだかバカバカしくなったので買うのをやめちゃいました。
10万円と引き合うほどの何かが、最近のサントラ盤にあるとは思えないっす。
さて、本日の話題はストコフスキーです。
いきなりですが、超個人的ストコフスキー・ベスト5の発表。
第1位は……
J.S.バッハ管弦楽曲集:ストコフスキー編レオポルド・ストコフスキー指揮 交響楽団
1. トッカータとフーガ ニ短調BWV565 1957/1958年 ステレオ録音 EMI/Capitol |
ベスト5と言っておきながら、2〜5位をすっ飛ばして、いきなり第1位の発表。
普通は5位から降順(このばあい昇順ってのが正しいの?)に発表するものなんだろうけど。
いいじゃないですか、こんなのただの遊びなんだから。明日になれば2位が1位になり、3位が5位にもなる。そんな世の中です。
いつも思うんだけど……ベストテン発表で気に掛かるのは、第11位の存在なんですね。10位までは発表されるけど、次点の11位は発表されない。
とすると、10位と11位の間には厳正厳密なる格差がなきゃおかしいんだけど、そんなものありゃしないわけで。だから、ベストテンとか鵜呑みにして映画観たり本読んだりするのは、とても滑稽なことだと思いますですよ。
1位と11位とじゃ、やっぱり違いがあるんだろうけど。
さて、堂々第1位の「バッハ・ストコフスキー」ですが……
音楽の父ヨハン・セバスチャン・バッハの楽曲を、元オルガン奏者でもあったストコフスキーが、フィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者時代に、オケの練習用に編曲したものです。フィラデルフィア管弦楽団は、後年「華麗なる」と修飾されるくらいきらびやかなサウンドの楽団に成長するのですが、そのトレーニングに用いていたのが、このバッハ・トランスクリプション。楽団の練習用とあって、各々の楽器をフル機動させつつ、全体のアンサンブルを「これでもかっ!」ってくらい有機的に調和させた内容になっています。
そういう目的で編曲した楽曲ではありましたが、誰かに唆されて公演してみたところ評判が良かったので、同楽団の看板プログラムになってしまったということです。
ディズニー製作のアニメーション『ファンタジア』(1940年)でも、1曲目に「トッカータとフーガ ニ短調」を演奏してました。ストコフスキーが左右の手を振ると(彼は指揮棒を使わないで指揮をする)、右や左から、青や赤の光の波がわーっと立ち昇ったりして、(アニメとしてはつまらないものでしたけど)それで、けっこう有名になっちゃいました。
ファンタジア
|
現在、ストコフスキーのバッハものは、3種類の国内盤CDが入手可能です。
フィラデルフィア管弦楽団を指揮したRCA盤は、SP盤復刻のモノラルで音質に難があり、70年代のライヴをフェイズ4方式で録音したデッカ盤は、チェコ・フィルのアンサンブルがイマイチ。
結局、指揮者自身の名前を冠したストコフスキー交響楽団によるEMI盤が一番出来がよろしいようです(RCA盤に収録されている美旋律の「シャコンヌ」が入っていないのが残念だけど)。
ステレオ初期(1957/1958年)の録音だから、ノイズ(マスターテープの走行音)がちょっぴり残ってますけど、低域の量感もたっぷり、高域の歪みもなく、デジタル・リマスタリングは良好。音質を気にする余裕がないくらい充実している、素晴らしい演奏内容です。
1曲目は、先にも書いた「トッカータとフーガ」。
(注:国内盤と輸入盤では収録順番が異なってます)
(フーガだから)管弦楽サウンドが、グワァングワァン、波状に攻めてきて圧倒されますです。
2曲目はバッハのオルガン曲のなかでも重厚巨大な「パッサカリアとフーガ」。このCDのなかでも最大の聴きものになってます。続いて、お馴染み「G線上のアリア」など、全11曲が収録されているのですが……
「パッサカリアとフーガ」を聴いているうちに、唐突に横道に逸れてみたくなったんですね。それで……
ハンス・ジマーの『クリムゾン・タイド』を聴いてみました。
うーん、やっぱりそうなんだなあ。
やっぱりジマーには、ドイツ人の血が流れていたんだなあ。
クリムゾン・タイド:サウンドトラック
Crimson Tide: Original Soundtrack 1995年 Hollywood |
『クリムゾン・タイド』(じゃなくて他のジマー作品でもいいんだけど)から、カチャカチャ・ドコドコの効果音的シンセドラムを抜くと、そっくりそのまま、ストコフスキーがオケ用に編曲したバッハになっちゃうんですね。『クリムゾン・タイド』には合唱も入ってますけど、まるっきり「マタイ受難曲」です。『ハンニバル』じゃ「ゴールドベルク変奏曲」を、『グラディエーター』でも、ワーグナーをそっくりそのまま使っていたし。
これってやっぱり……米国黒人のジャズがスピリチュアル(黒人霊歌)やゴスペルと切り離せないような、または、我々ジャパニーズがシナ抜き音階の呪縛から抜け出せないような……DNAの奥深くに刻印された民族の記憶の為せるわざ、ってことなんでしょうか。
そういえば、現在LAで映画音楽を勉強されているjumusさんも、以前どこかで「ハンス・ジマーは演歌だ」と仰ってましたっけ。
では、
明日か明後日か、もしかしたら来週になるかも……
ストコフスキー・ベスト5の続きを、どうぞお楽しみに。
(今回は本当に続きます)