失はれた地平線:ディミトリ・ティオムキン作品集
December 13, 2010
ハリウッド黄金時代の映画音楽を再演奏してシンフォニックな映画音楽の魅力を1970年代に復活させた、チャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団のRCA録音シリーズが、ジャケット・デザインを一新して Sony Music Entertainment から再発売されている。
20年前にBMGがリリースして以来、長く廃盤状態が続いていたので、これはとっても嬉しい。当時、唯一買い漏らしていた「ディミトリ・ティオムキン作品集」を速攻げっと!
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失はれた地平線 ディミトリ・ティオムキン作品集Lost Horizon 1. 失はれた地平線(1936年) チャールズ・ゲルハルト指揮 |
1970年代にチャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル・フィルによって録音された、クラシック・フィルムスコア・シリーズの1枚。
ロシアからアメリカに移住したディミトリ・ティオムキンの作品集。
聴きものは何といっても23分の『失はれた地平線』組曲。莫大な製作費によって構築されたシャングリラ(理想郷)が、音楽の絵巻物として絢爛豪華に再現される。
ダイナミックな『ナバロンの要塞』を経て、『果てしなき蒼空』から「プロローグ」と「夜想曲」、「エピローグ」の組曲。日本未公開の『The Fourposter』、甘いメロディが人気の『友情ある説得』と続き、アルバムの最後を締めくくるのはシネラマ・ドキュメンタリー『世界の楽園』のコーラス・フィナーレと、全体の楽曲構成も良い。
『赤い河』、『OK牧場の決闘』、『真昼の決闘』、『リオ・ブラボー』などの西部劇音楽でポピュラーな人気を得ているティオムキンですが、ヒッチコック(『見知らぬ乗客』『ダイヤルMを回せ!』)から歴史大作(『ローマ帝国の滅亡』)、SFホラー(『遊星よりの物体X』)までこなす、ハリウッドの大物作曲家であります。
ゲルハルト&ナショナル・フィルだから、演奏は申し分なし。
だけど、比較的地味ですよ、収録作品は。ティオムキンの他のヒット作と比べると。『ナバロンの要塞』と『友情ある説得』くらいですか、ポピュラリティのある楽曲は。
コロムビア映画が社運を賭けて製作した超大作『失はれた地平線』だって、最近リメイクされてちっとは知られるようになったんだろうけど、1937年製作。なーんと70年以上前の映画ですから。
リアルタイムで観て、音楽聴いて懐かしむなんて楽しみ方できる人って、そうそう生き残ってないでしょう。
淀川長治も、野口久光も、双葉十三郎も死んじゃったし。
温故知新。
スピルバーグだってティオムキン音楽を聴いて、『JAWS ジョーズ』のアクション場面にティオムキンのようなフーガを書いてくれと、ジョン・ウィリアムズに依頼したそうだし。
また、この時代の映画音楽は映画と切り離して、20世紀のロマン派音楽として聴いてもけっこう愉しめるのではないかと。
ちょいと前に、『ジャイアンツ』や『OK牧場の決斗』などが網羅された、シティ・オブ・プラハ・フィルによる Silva Scrren 再演奏盤(超豪華な4枚組)が出てましたが、もう入手困難になってるみたいです。
ティオムキンなんて知らないよって人には、絶好の入門編だったんですけどね。
再発売して欲しいな。これも買い漏らしちゃってるから。
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ディミトリ・ティオムキン ザ・エッセンシャル・フィルム・コレクションThe Alamo: Dimitri Tiomkin Disc 1 シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニー管弦楽団 |
ティオムキン集で、忘れてならない名盤をもう1枚。
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真昼の決闘 オリジナル・フィルム・スコアHigh Noon: Original Film Scores 1. シラノ・ド・ベルジュラック(17:57 / 4トラック) ローレンス・フォスター指揮 ベルリン放送交響楽団 |
かつては帝王カラヤンがレコーディングの本拠地としたベルリンのイエス・キリスト協会にてデジタル録音された、ディミトリ・ティオムキンの映画音楽曲集。組曲スタイルで4作品を収録。ズービン・メータ時代のロス・フィルで副指揮者を務め、NHK交響楽団に客演したこともあるローレンス・フォスター指揮ベルリン放送交響楽団による演奏。
収録時間 78分。4作品すべて聴き応えあり。
上記RCAゲルハルト盤同様、こちらもRCA/BMGを吸収したSonyから、そろそろ再発売されても良さそうなものだけど。
選曲、演奏、録音、すべて良好。中古盤屋で見かけたら、速攻ゲットして絶対に損のない名盤です。