男と女の逃避行(12本)
2022/02/01
暗黒街の弾痕
YOU ONLY LIVE ONCE
1937年(日本公開:1937年06月)
フリッツ・ラング ヘンリー・フォンダ シルヴィア・シドニー ウィリアム・ガーガン バートン・マクレーン ジーン・ディクソン ジェローム・コーワン マーガレット・ハミルトン ウォード・ボンド グイン・ウィリアムズ ジャック・カーソン
弁護士事務所に勤める女シルヴィア・シドニーは、刑務所を出所したばかりの前科三犯の男ヘンリー・フォンダと結婚し妊娠する。男は冤罪で死刑を宣告されるが、執行直前に説得する神父を射殺して脱獄。二人は強盗を続けながら国境へと逃げ延びようとする。
前科者への偏見、冤罪、脱獄、逃避行といったエピソードを手際よく並べた脚本。
光と影、雨と霧を効果的に使ったフィリッツ・ラングの演出。
深夜の自動販売機で煙草を買うシルヴィア・シドニーの表情が切ない。
原題は「You Only Live Once」。犯罪を題材とした社会派映画。
70点
#男と女の逃避行
#1930年代の犯罪映画
2022/02/02
夜の人々
THEY LIVE BY NIGHT
1948年(日本公開:1988年04月)
ニコラス・レイ ファーリー・グレンジャー キャシー・オドネル ハワード・ダ・シルヴァ ジェイ・C・フリッペン ウィル・ライト イアン・ウルフ
殺人罪で収監されていた青年ファーリー・グレンジャーは仲間とともに脱獄、銀行を襲って大金を得る。隠れ家で知り合った娘キャシー・オドネルと恋に落ちた青年は、彼女を連れて仲間たちと別れる。長距離バスで逃げる途中にあった簡易結婚所で二人は結婚、娘は妊娠する。モーテルを転々としながら、二人はメキシコに逃げる夢を語る。
主役の若い二人が初々しく瑞々しい。バスで泣き止まない隣席の赤ん坊を抱っこする場面とか、ちょっとした芝居が新鮮で印象に残る。
エリア・カザンの助監督だったニコラス・レイの監督デビュー作。RKO製作。
ストーリー構成にメリハリがあり、車が走行するシーンの空撮も躍動感があって良い。
銀行の下見のついでに買った腕時計を娘にプレゼントする青年。同じ腕時計をクリスマスのプレゼントに買ってくる娘。腕時計はふたりが同じ時を生きている証となる。
「いま何時?」と訊く。繰り返しのセリフがいい。
「目を開けるとあなたがいるわ。猫になった気分よ」
「父親になれば男は強くなる」
犯罪を題材とした恋愛映画。
70点
#男と女の逃避行
#1940年代の犯罪映画
2022/02/03
拳銃魔
GUN CRAZY
1950年(日本公開:1952年12月)
ジョセフ・H・ルイス ジョン・ドール ペギー・カミンズ ベリー・クルーガー モリス・カルノフスキー アナベル・ショウ ハリー・ルイス ネドリック・ヤング ラス・タンブリン
拳銃好きが嵩じて少年院で子供時代をおくったジョン・ドールは、カーニバルの曲芸射撃ショーに出演していた二挺拳銃のペギー・カミンズと意気投合し、ショーの一座から抜けて結婚。贅沢な暮らしを求める女に唆されて強盗を重ね、西部の町々を渡り歩くうち次第に二人は追い詰められていく。
主人公の少年時代を「ウエスト・サイド物語」のラス・タンブリンが演じている。
土砂降りの雨に濡れながら銃砲店のガラスを破り拳銃を盗むファースト・シークエンスからキビキビした演出は見事。遊びでひよこを撃ち殺してしまった後悔が、女との恋愛関係に重要な葛藤をもたらす。設定が巧い。脚本にクレジットされているミラード・カウフマンは、ダルトン・トランボの変名だったらしい。
メリハリの効いたアクションシーンがいい。車の後部座席にカメラを置いてワンショットで銀行襲撃を撮るのは、この映画が先駆だったそうだ。
最初の方はヴィクター・ヤングの甘ったるい音楽が内容と合っていない感じがしたが、だんだん気にならなくなった。ダンスホールの歌とかヴィクター・ヤングらしい。
特筆すべきはペギー・カミンズの性悪女っぷり。堪らんです。
山田宏一氏の著書に「映画的なあまりに映画的な美女と犯罪」があるが、まさしく本のタイトルにふさわしい一編。すこぶる面白い。
70点
#男と女の逃避行
#1940年代の犯罪映画
2022/02/06
勝手にしやがれ
A BOUT DE SOUFFLE
1959年(日本公開:1960年03月)
ジャン=リュック・ゴダール ジャン=ポール・ベルモンド ジーン・セバーグ ダニエル・ブーランジェ ジャン=ピエール・メルヴィル ジャン=リュック・ゴダール アンリ=ジャック・ユエ
自動車泥棒した男ジャン=ポール・ベルモンドは追ってきた白バイ警官を射殺、アメリカからの留学生ジーン・セバーグが滞在するホテルの部屋に転がり込む。
魅力的に撮られたパリの街。
魅力的に撮られたジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグ。
繰り返されることで退屈を誘う音楽。魅力的に響く空疎なセリフ。
アナーキー&ナンセンスの極致。
意味ありげなセリフに意味はなく、全編手持ちカメラによる即興演出。
間延びした芝居の間をカットしただけのジャンプカットが新鮮にとられる。
「映画的なもの」を無計画にぶち込んだ、ゴダールのプライベート・フィルム。
クレジットされているトリュフォーやクロード・シャブロルはほとんど関与してない。
仲間のデビュー作のご祝儀に名前を貸しただけだという。
ゴダールの「勝手にしやがれ」が日本で公開された1960年3月は、トリュフォーの「大人は判ってくれない」も公開されている。マンキウィッツの「去年の夏突然に」やロッセリーニの「ロベレ将軍」も公開されている。日本の若い観客は、ハリウッドの手練職人もネオレアリズモの旗手も過去の遺物と葬り去り、ゴダールとトリュフォーを選んだ。
何かを作るのではなく、何かを壊すために作られた映画。
最低なのはゴダールの技術か、それを受け入れた観客か。
勝手に見やがれ。
DVD特典のドキュメンタリー「スウェーデンホテル12号室」が秀逸。
65点
#男と女の逃避行
#1960年代の犯罪映画
2022/02/04
俺たちに明日はない
BONNIE AND CLYDE
1967年(日本公開:1968年02月)
アーサー・ペン ウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ ジーン・ハックマン マイケル・J・ポラード エステル・パーソンズ デンヴァー・パイル ダブ・テイラー エヴァンス・エヴァンス ジーン・ワイルダー
日常に退屈していたウェイトレスのフェイ・ダナウェイは、刑務所を出たばかりのウォーレン・ベイティと出会い、スリリングな強盗稼業に精を出す。大恐慌時代に実在したバロウズ・ギャング、ボニー・パーカーとクライド・バローの物語。
ボニーとクライドが、待ち伏せしていた警官隊に 87発の銃弾を食らって射殺されたのは 1934年5月23日。フリッツ・ラングの「暗黒街の弾痕」はそれから2年半後の 1937年1月にアメリカ公開されている。二人をモデルとした映画はその後も「夜の人々」(1948年)「拳銃魔」(1949年)などが作られたが、登場人物の役名に実名を用いたのは本作が初めて。
余談:1958年に「鉛の弾丸(たま)をぶちかませ」(原題:The Bonnie Parker Story/監督:ウィリアム・H・ウィットニー)が作られている。ドロシー・プロヴァインが演じたボニーは原題にあるとおり実名だったが、クライド・バロウはガイ・ダロウに名を変えてジャック・ホーガンが演じている。(タランティーノが舌舐めずりして歓びそうな)ギャング・アクション。AIP配給2本立てのB級プログラムらしい。未見。
銀行に抵当で家を差し押さえられた農夫に拳銃を貸して、憂さ晴らしに管理会社の所有物件であることを示す看板を撃たせる。農夫は使用人の黒人にも銃を回し撃たせる。この場面が映画のテーマ。
ここに黒人を登場させたのが良かった。ジョージ・A・ロメロ「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のラストにつながる、アメリカ映画のなかの黒人。
銀行を襲ったクライドは、窓口に立っていた貧しそうな農民からは金を盗らない。
指名手配され二度と母親と一緒の生活は望めなくなったボニーが、最後に親族とピクニックをする場面。母親からの厳しい言葉。覆水盆に返らず。
デヴィッド・ニューマン&ロバート・ベントンの脚本は実話に基づいた創作ではあるものの、クライドの兄夫婦の登場、ボニーの家族とのピクニック、最期の銃撃場面など、過去の映画より、より史実に近いエピソードを採り入れている。
タイトルに幼少時のセピア写真をインサートしたのも効果があった。
河原でキャンプしているホームレスの人たちから飲水を貰う場面もなかなか良い。大恐慌時代の世相は、プレストン・スタージェスやフランク・キャプラのコメディ、ジョン・フォードの「怒りの葡萄」でも知ることができる。
バロウズ・ギャングを逮捕しようと狙ってきたテキサス・レンジャーの男(デンヴァー・パイル)。拘束され、記念写真を撮られ、ボートで川に流される。このときの屈辱がギャングを執拗に追う動機となるのだが。クライドは最初っからこいつの胸に付けている星のバッヂが気に入らない。嫌悪感が剥き出しになっている。ふざけてキスしたボニーに彼が唾を吐いたあとの怒りようはない。誰も止めに入らなかったら川で溺死させていた。
これまで見てきた3本(「暗黒街の弾痕」「夜の人々」「拳銃魔」)との相違は、制服(テキサスレンジャー)がはっきりと敵役になっているところにある。
制服=体制側の人間に理屈抜きで敵意をみせるのは、制作当時(ベトナム戦争)の時代が反映されている。
車を盗まれたカップル。善良な一般市民の彼らには、バロウズ・ギャングもフレンドリーな態度で冗談を交わす。男の職業が葬儀屋と知って放り出すのはギャグだ。
冒頭、いきなりフェイ・ダナウェイの唇のクロースアップから始まる。
「死刑台のエレベーター」のジャンヌ・モローに影響されたファースト・ショット。
フェイ・ダナウェイはこの1本で一躍人気女優になった。この映画、出演者はみんな良いのだが、彼女の存在感はずば抜けている。その後もエロい女優として「華麗なる賭け」や「アレンジメント/愛の旋律」などでフェロモンを撒き散らしていたが、本作がずば抜けてエロい。相手がインポテンツなので欲求不満な苛立ちがなおのこと女を匂わせる。
いっぽう不能男を演じるウォーレン・ベイティは、実生活では取っ替え引っ替え女を食い散らかしていたころで、(他の俳優に出演依頼したが断られたため主役を演じたそうだが)このキャスティングはギャグである。
最後の方でベイティが掛けたサングラスの片方のレンズが(意味もなく)外れるのは、「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドへの目配せ。
デヴィッド・ニューマン&ロバート・ベントンは、シノプシスの段階で「突然炎のごとく」のトリュフォーに映画化を相談している。その後、ゴダールだったり、レスリー・キャロンだったりを経由してウォーレン・ベイティに渡り、アーサー・ペン監督で製作されたわけだが、もともとはヌーヴェルヴァーグの新進気鋭に作ってもらおうと企画された映画だっただけに(その後、何十回も書き直したのだろうが)ヌーヴェルヴァーグっぽいタッチが色濃く残されている。
(ラストについて)一瞬視線を交わす。短いショットが強く印象に残る。
編集の腕の冴え。無情な切り落としも斬新。
盗まれた車を追いかけたところを追いかけられ、バロウズ・ギャングに拉致される間抜けなカップルにジーン・ワイルダーとエヴァンス・エヴァンス。
エヴァンス・エヴァンスは名前がユニークなので(名前だけ)覚えていたけれど、映画出演は本作と「プロフェシー/恐怖の予言」の2本のみ。ワイルダーはこれが映画初登場。意外だったのは彼がアクターズ・スタジオ出身の役者で、オフ・ブロードウェイ劇「カッコーの巣の上で」の出演経験もあったこと。ふざけたキャラのコメディばかり出ていたので、まったく気づかなかった。
アクターズ・スタジオ流の即興芝居の場面も多い。ジーン・ハックマンとベイティのツー・ショットにそれが目立つ。ガソリンスタンドで働いていたマイケル・J・ポラードが仲間に誘われる場面なんかもそうだ。ちょっと考える隙間がリアクションに入る。兄弟再会の場面は「マラソンマン」でもロイ・シャイダーとダスティン・ホフマンが子供じみた戯れ合いをやっていたが、これもアクターズ・スタジオの流儀なのだろうか。
結局、アメリカン・ニューシネマとは、ヌーヴェルヴァーグとアクターズ・スタジオの融合だったと言えるのかも知れない。
1970年代に、主に新しい世代の映画作家によるノスタルジック映画ブーム(ボグダノヴィッチ「ペーパー・ムーン」、コッポラ「ゴッドファーザー」、ロイ・ヒル「スティング」、ミリアス「デリンジャー」、フリードキン「ブリンクス」など)がやってくる。
その先駆けだった。
70点
#男と女の逃避行
#1960年代の犯罪映画
2022/02/10
ゲッタウェイ
THE GETAWAY
1972年(日本公開:1973年03月)
サム・ペキンパー スティーヴ・マックィーン アリ・マッグロー ベン・ジョンソン アル・レッティエリ サリー・ストラザース スリム・ピケンズ ボー・ホプキンス リチャード・ブライト ジャック・ドッドソン ダブ・テイラー ロイ・ジェンソン ジョン・ブリソン
刑期の短縮と交換に銀行を襲う取引をしたスティーヴ・マックィーンが、仲間の裏切りにあいながら、奪った50万ドルを持って妻アリ・マッグローと一緒にメキシコへ逃げる。
ショットガン、どっかんどっかん、マシンガン、だだだだだ!
マックィーン・オン・ステージ! かっこいいぞ!
逃避行する主人公がラストで死なない犯罪映画。
これまでの犯罪映画は犯人のどちらかは死んで(または奪った大金が消えて)悲劇的結末になるのがお約束だったのに。
(喜劇でもないのに)これって反則じゃない?
脚本家(ウォルター・ヒル)と監督(サム・ペキンパー)と主役(スティーヴ・マックイーン)にゴチャゴチャあって、音楽もジェリー・フィールディングからクインシー・ジョーンズに差し替えられて、原作者(ジム・トンプソン)は映画に不満たらたらだったらしいけど。面白い映画に仕上がってるし、田舎の中学生も映画館でウヒャーって喜んで見てたよ。
70点
#男と女の逃避行
#1970年代の犯罪映画
#サム・ペキンパー
2022/02/09
明日に処刑を…
BOXCAR BERTHA
1972年(日本公開:1976年11月)
マーティン・スコセッシ バーバラ・ハーシー デヴィッド・キャラダイン バーニー・ケイシー バリー・プリマス ジョン・キャラダイン ヴィクター・アルゴ デヴィッド・R・オスターハウト ハリー・ノーサップ
飛行機乗りの父親を事故で失い天涯孤独となった少女バーバラ・ハーシーは、列車をタダ乗りしながら町から町へと放浪生活をおくっているうち、労働組合の活動家デヴィッド・キャラダインや、北部から流れてきたいかさま師バリー・プリマス、黒人バーニー・ケイシーとギャング団を結成、鉄道会社を襲撃する。
1970年代に低予算ギャング映画を量産していたロジャー・コーマンのAIP映画。
お蔵入りしていたが、カンヌでグランプリをとった「タクシー・ドライバー」がヒットしたことで 1976年11月に急遽公開された。
マーティン・スコセッシの商業映画デビュー作。
スコセッシのいきなり暴力描写が強烈。
デヴィッド・キャラダインが貨車に磔になるラスト。
聖書からの引用も入っている。スコセッシの映画はキリスト教のイメージがつきまとう。
バーバラ・ハーシーがすごくいい。撮影当時は22歳くらいだったろうか、少女の面影を残し自然な演技、純情、素朴、自然な裸体。どんな境遇にあっても明るい性格がかえって少女の哀れを誘う。
ギャングの首領と報道されるのを嫌って盗んだ金を組合に寄付する(「オペラハット」のゲイリー・クーパーみたいに)世間知らずで真面目なデヴィッド・キャラダインもいい。
70点
#男と女の逃避行
#1970年代の犯罪映画
2022/02/11
ダーティ・メリー クレイジー・ラリー
DIRTY MARY, CRAZY LARRY
1974年(日本公開:1974年10月)
ジョン・ハフ ピーター・フォンダ スーザン・ジョージ アダム・ロアーク ヴィク・モロー ケネス・トビー ユージン・ダニエルズ リン・ボーデン ロディ・マクドウォール
レース・ドライバーのラリー(ピーター・フォンダ)は相棒の整備士(アダム・ロアーク)と組んでスーパーマーケットの金庫から大金を強奪。逃走するシボレー・インパラにあばずれ娘スーザン・ジョージが乗り込んできたことから計画に狂いがでて、警察の執拗な追跡が始まる。
ピーター・フォンダもアダム・ロアークも、自己中心的でレースのことしか頭にない。道徳心・公共心が欠落している。バザールで盗んだ黄色いダッジ・チャージャーに大金を置いたまま時間稼ぎにプール・バーに入ったりして、金に執着している様子もない。逃げ回ることを楽しんでいて焦りは感じられない。刹那的な悲壮感は皆無。単純にアホなだけなのか。
万引事件で仮保釈中のスーザン・ジョージも、これといって目的があるわけでもなく、(面白そうだからという理由だけで)成り行きで同乗している。スーザン・ジョージに(「明日に処刑を…」のバーバラ・ハーシーみたいな)愛嬌があったら、彼女のキャラはぐっと興味深いものになっていただろう。
事件を担当するフランクリン部長(ヴィック・モロー)が、上司の声に耳を貸さず制服とバッヂを嫌ってるあたり、ベトナム戦争時代の反体制思考が匂う。
スーパーのマネージャー(ロディ・マクドウォール:なぜかタイトルにクレジットされていない)の妻と娘を人質に、銃やナイフを使わず大金を奪う手口は面白い。
そのあとのストーリーは、警察無線を盗聴して捜査網の裏をかき、ひたすら逃げるのみ。
全編オール・ロケのカーチェイスが最大の見どころ。
排ガス規制前の恐竜みたいなアメ車が走るたびに砂煙あげてドリフト。バリケートの壁を突き破り、加速して跳ね橋をジャンプ。次々とクラッシュするパトカー。ヴィック・モローのヘリコプターとダッジ・チャージャーのチェイスがユニークかつスリリング。
スタントマンの命がけの本気仕事に感動。追いかけるカメラも大変だったと思います。
あっけないラストは、「バニシング・ポイント」(あるいは「あの胸にもう一度」)の真似かどうかは分からないけど、当時の映画にはありがちな結末。
タイトルバックに流れるフォークソングも 70年代風で懐かしいサウンド。
60点
#男と女の逃避行
#1970年代の犯罪映画
2022/02/10
続・激突! カージャック
THE SUGARLAND EXPRESS
1974年(日本公開:1974年06月)
スティーヴン・スピルバーグ ゴールディ・ホーン ウィリアム・アザートン ベン・ジョンソン マイケル・サックス グレゴリー・ウォルコット スティーヴ・カナリー
裁判所命令で養育権を取り上げられた若い母親ゴールディ・ホーンは、テキサス州の矯正施設に収容されていた夫ウィリアム・アザートンを脱獄させ、逃走中にパトカーをジャック。警官を人質に幼い息子のもとへと向かう。1969年に実際に起きた事件を題材にしたマシュー・ロビンス&ハル・バーウッドのオリジナル脚本。
ジャックされたパトカーの後を 200台のパトカーがぞろぞろ付いて行く流れが滑稽。
2名の狙撃手が派遣されてきたあたりから、悲劇的な結末が予感される。
長閑な逃亡劇が一転して一触即発のパニックに発展しそうなサスペンス。
無邪気でおバカで可愛いキャラはゴールディ・ホーンに誂えたかのような適役。
気が弱く優柔不断なウィリアム・アザートン、真面目で優しい人質警官マイケル・サックスも好演。
なんといってもパトロール隊を指揮する警部ベン・ジョンソンがいい。流血を避けて事件の解決を模索する苦渋の姿は「テルマ&ルイーズ」のハーヴェイ・カイテルも良かった。
ビジュアル面で語られることが多いスピルバーグだけど、役者の使い方が抜群に上手い。キャラの立て方が(これが商業映画デビューというのに)黄金時代のハリウッド職人監督なみの腕前。
目的地が「シュガーランド」というのもいい。
強いていえば野次馬と法律が悪役。
犯人を撃ち殺して名声を得ようとするバカは「ジョーズ」で賞金目当てに鮫狩りに出る奴らと同類。沿道で激励の言葉をかけプレゼントを投げ込む群衆はその裏返し。
車のクラッシュ・シーンやラストの余韻は「激突!」に似ているものの、今後再映されるようなことがあれば「シュガーランド・エクスプレス」に改題されるんだろうな。
65点
#男と女の逃避行
#1970年代の犯罪映画
2022/02/12
トランザム7000
SMOKEY AND THE BANDIT
1977年(日本公開:1977年10月)
ハル・ニーダム バート・レイノルズ サリー・フィールド ジャッキー・グリーソン ポール・ウィリアムズ ジェリー・リード マイク・ヘンリー パット・マコーミック アルフィー・ワイズ
金持ちの道楽親子(パット・マコーミックとポール・ウィリアムス)から 28時間以内に州外持ち出し禁止のビールを密輸する賭けを提案されたトラック野郎(バート・レイノルズ)は報酬8万ドル目がくらみ、相棒(ジェリー・リード)を誘ってハイウェイを爆走。
無事何事もなく荷を積んで戻る途中、結婚式から逃げてきた花嫁(サリー・フィールド)を拾ったことで、テキサスの保安官親子(ジャッキー・グリーソンとマイク・ヘンリー)から執拗に追われる。
砂煙あげてドリフトするトランザム・ファイアーバード、次々とクラッシュする間抜けなパトカー、トラック仲間の友情援護、ストーリーに関係のない酒場の喧嘩、バート・レイノルズとサリー・フィールドのどうでもいいキス・シーン、軽快なカントリー・ミュージック、ジャッキー・グリーソンのぬるいギャグ。
スタントマン出身のハル・ニーダムが原案・初監督のドタバタ・コメディ。
21世紀の映画ファンは、なんでこんな映画が全米大ヒットしたのか理解できないだろうな。好評につき続編も製作されたんだぜ。
60点
#男と女の逃避行
#1970年代の犯罪映画
2022/02/13
ワイルド・アット・ハート
WILD AT HEART
1990年(日本公開:1991年01月)
デヴィッド・リンチ ニコラス・ケイジ ローラ・ダーン ウィレム・デフォー イザベラ・ロッセリーニ ダイアン・ラッド シェリリン・フェン シェリル・リー ハリー・ディーン・スタントン
刑務所を仮保釈になったニコラス・ケイジは、二人の仲を裂こうとする母親から逃げてきたローラ・ダーンとカリフォルニアへの旅に出る。
世界は悪意に満ちてグロテスクだけど、お互いの愛を信じられたら幸せになれる(かも知れない)。蛇皮のジャケットで武装して、いつも心にエルビスを。
変態監督デヴィッド・リンチの、セックスと暴力を題材としたコメディ。
リンチ映画は怪優・怪演の宝庫。異常な母親ダイアン・ラッド(悪い魔女)を筆頭に
、ウィレム・デフォー、イザベラ・ロッセリーニ、シェリリン・フェン、シェリル・リー(善い魔女)とキワモノ・クセモノがぞろぞろ出てくる。
なんのために出てくるのか分からんような奇妙奇天烈なキャラがわんさか出てくる。
公開当時は騙されたが、TVシリーズ「ツイン・ピークス」を経たあとでは、これらのキャラが虚仮威しに過ぎないことが分かってる。リンチがやろうとしていることは、観客を困惑させクラクラした気分を味わせたいだけ。ストーリーに価値はない。
観ている間はとてつもなくスリリングで面白い。
良くも悪くも、リンチらしさが一番よく出たシュールレアリスム(変態趣味)だと思う。
リンチの映画にストーリーを追うのはナンセンス。忌まわしい過去のフラッシュバックに意味を求めるのは無駄。光の玉から良い魔女が舞い降りてきて(強引に)ハッピーエンドになっても腹を立てない。
インサートされるマッチ棒の超クロースアップ、音響効果と音楽。ヌード女をはべらせ便器にしゃがんだまま電話するジジイ、歩行器のババア、庭で踊る裸のデブ女3人組、不気味な雰囲気だけで存在に意味はない。主人公たちを含めすべての登場人物が現実と違う次元の精神世界に生きている。口紅を満面に塗りたくるダイアン・ラッド、漫画のようにメイクされたイザベラ・ロッセリーニの眉毛、自らのショットガンで頭を吹っ飛ばすウィレム・デフォーの最期(ぐちゃり)、ちぎれた手首を咥え去る犬、渋滞する車の屋根を走り渡るニコラス・ケイジ。
極めつけはニコラス・ケイジが熱唱するエンドクレジットの「ラブ・ミー・テンダー」。こんなのフル・コーラスで聞かされたあとに、どんな顔して劇場を出たらいいのさ。
難解な映画なんてない。
ヘタクソに作られた映画とか、独り善がりのトンチンカン映画なら山程ある。
デヴィッド・リンチはそのどちらでもない。不思議な立ち位置にいる映画作家。
「ブルー・ベルベット」ではキャーキャーわめくだけの馬鹿女だったローラ・ダーンが、ぐっとイイオンナに化けてファックしてたので、良かった。
65点
#男と女の逃避行
#1990年代の犯罪映画
2022/02/13
ナチュラル・ボーン・キラーズ
NATURAL BORN KILLERS
1994年(日本公開:1995年02月)
オリヴァー・ストーン ウディ・ハレルソン ジュリエット・ルイス ロバート・ダウニー・Jr トミー・リー・ジョーンズ トム・サイズモア ロドニー・デンジャーフィールド エド・マックラーグ デイル・ダイ サルヴァトール・ゼレブ リチャード・ラインバック バルサザール・ゲティ ラッセル・ミーンズ プルイット・テイラー・ヴィンス スティーヴン・ライト ピーター・クロンビー ジョー・グリファシ ポール・ディロン
父親から性的虐待を受けていたジュリエット・ルイスは肉屋の配達人だったウディ・ハレルソンとともに両親を殺し、永遠の愛を誓う。
ひたすら殺しまくり盗みまくり、毒蛇に噛まれて逮捕されたのち、刑務所で起こった暴動にまぎれて脱獄。二人に協力的だったTVリポーター(ロバート・ダウニー)を殺して、また逃げる。
モノクロになったりアニメになったり、記録フィルム合成したり説教したり殺したり、なにを狙っているのかさっぱり分からん。
音楽(既成曲)もごちゃごちゃして支離滅裂、オリヴァー・ストーンの悪趣味映画。
ネタを提供したクエンティン・タランティーノがこの映画を嫌っているそうだが、さもありなん。オリヴァー・ストーンにはユーモアのセンスがない。
二人が逮捕された後半、トミー・リー・ジョーンズの刑務所長が登場してから多少面白くなる(演じたトミー・リーがいちばん面白がっている風)。
それでも社会的メッセージが邪魔くさい。シリアスなのかコメディなのか、どっちつかずで見苦しい。暴力を娯楽として消費してゆく現代アメリカの歪なんかクソ喰らえ。真面目にやりたいんだったら(タランティーノからネタ買わずに)いつものように真面目にやれ。厨二病かよ。
60点
#男と女の逃避行
#1990年代の犯罪映画