日本映画について 其の弐

この日記のようなものは、すべてフィクションです。
登場する人物、団体、裏の組織等はすべて架空のものです。ご了承ください。

日本映画について 其の弐

May 1, 2004

いまの日本映画はつまんね〜。

だから……
自分で資金を出し、絶対に面白い日本映画を作ってやろう。
そんな(阿呆な)ことを考えたとする。
用意した製作費は5億円。
これを劇場公開して、製作費をペイさせるためには、いったい何人のお客さんを劇場に呼び込めばよいのか?
テレビ放映やビデオ・ソフト化による、2次利用/3次使用の収入は考えないものとして試算(シミュレーション)してみる。

これまでにも、当「そえたいそえりろん」は、数多くの役立たずのウンチクを披露してきたが、今回はその極めつけ。スペシャル版だ。
このコラムを読んで、ホントに5億出してもよい、という人は是非ご一報ください。
(そんな酔狂な人、ウチのサイトなんか見てるわけないか)

劇場入場料は、前売りやレイト割引などを考慮して、1人当たり一律1500円として考える。(2003年度の平均入場料金は、1252円 : 日本映画製作者連盟発表)

100万人の観客動員があった場合は、1500X100万=15億円。
これが興行収入と呼ばれる総売上げ。
(昨年の例でいうと、邦画第12位の『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』が15億円の興行収入)

この興行収入のうち、50パーセントが劇場の取り分、残りの50パーセント(7億5000万円)が配給会社に納められる。
劇場と配給会社との間で交わされるこの契約は、作品毎に変わる。
『ジュラシック・パーク』など予め大ヒットが予測される作品では、劇場の取り分は30パーセントで配給70パーセント、などと配給会社は強気の契約を結び、逆にヒットの見込みが見当つかない作品では、50パーセント以下で契約されることもある。50は標準的かつ常識的な数字。

配給会社に納められた総売上げの50パーセント(これを配給収入:配収と呼ぶ)から、まずフィルムのプリント代と広告/宣伝の実費(P&A:プリント・アンド・アドバダイジング)が最優先で差し引かれる。(これをトップ・オフと呼ぶ)
これも作品によってケース・バイ・ケース……全国一斉に拡大封切りすればフィルムは100本以上プリントしなきゃならないし、都市部のアート・シアターで単館公開するのなら10本以下で済むかも知れない。
広告もテレビ・スポットをバンバン打つか、新聞や雑誌にどの位のスペースを入れるか、主演俳優を出演させたイベントをやるかやらないか……いろいろ。
近年はファースト・フードや、グッズやゲーム関連を扱う玩具メーカー、レコード会社などとタイアップ広告を出すのが普通になっている。もちろん人気アイドルが出演していれば、その所属プロダクションだって黙っちゃいない。その際の契約内容も大きく左右してくる。
ここでは、配収7億5000万円のうち、2億円がトップ・オフされたと仮定しよう。
残りは5億5000万円。
このうち60パーセントが製作者、あとの40パーセントが配給会社の取り分となる。
この割合も作品によって異なる。9:1で契約される作品もあれば、配収5億までは6:4だが、5億を超えた場合は7:3、10億以上だったら8:2といった取り決めが成されることもある。6:4は標準的かつ常識的な配分。

今回、製作者側が回収できた金額は、3億3000万円。
1億7000万円の赤字であ〜る。

1億7000万円の借金は、マニラに行って自分の臓器を売りさばいても返済不可能。あとは首を括るくらいしか、やることはない。
(えっ、先祖代々の杉山がある?……それは良かった! こんど鰻でも御馳走してください)

宣伝に2億もかけなきゃよかった、プリントも10本くらいでよかった。
そうしてりゃ赤字にならずにすんだのに……と泣いても、後悔先に立たず。

これは昨日も書いたことだが、いまの日本人はテレビで話題になっている映画にしか興味を示さない。宣伝費をケチってテレビのスポット広告を減らしたら、観客はもっと減ってしまっていただろう。
新聞も雑誌もテレビも話題にしていない映画なんて、誰も相手にしてくれない。
クチコミ? そのためには公開前に試写会をガンガンやっておく必要がある。会場を借り、試写会の案内状も出さなきゃいけない。それも広告費の1部だ。

最初は少ない観客数でも、作品が面白けりゃ評判になって次第にお客が増えてくる?
そのときが来るまで、劇場がジッと辛抱して上映してくれると思う?

1回の上映にお客は5人。1日4回上映で20人。総売上げは3万円。
そのうち半分の1万5000円を配給会社が持っていく。
映写のための電気代、空調代、その他の諸経費、従業員がいれば給料も払わなけりゃならないし、綺麗なシネコンに負けないよう音響設備や椅子や内装だって借金して整えたし……こんな状況が1ヶ月も続けば、館主は生活保護の手続きを取るため、民生委員に相談しなきゃならなくなる。

クチコミ? 阿呆、そんなもんがアテになるか、上映打ち切りじゃ!
さっさと次の映画、持ってこんかい!
(劇場の事情については、次の機会に書く)

逆算すれば…… (上記と同じ条件で公開した場合)5億円の映画は、
(5億(製作費)+3億3333万(配給利益)+2億(P&A)+10億3333万(劇場利益))÷1500(1人分の入場料)=137万7774人
137万7774人の動員があったなら、製作費はペイできていたことになる。

または、動員100万人が確実なら、
1500円(1人分の入場料)X100万人=15億円(興行収入)
15億円−(15億円X0.5)=7億5000万円(配給収入)
7億5000万円−2億円(P&A)=5億5000万円
5億5000万円−2億2000万円(配給利益)=3億3000万円

つまり製作費を3億3000万円までに抑えていたら、首を括らずにすんだわけだ。(または、先祖代々の杉山を売却せずにすんだ)

しかし、映画はミズモノ。
どう転がるか、公開してみるまでは分からない。
確実に100万人が観てくれる保証があれば、3億3000万の製作費でなんとかなる。
公開前から137万7774人の動員が確定しているならば、5億円の映画を作ったとしても、一文たりとも損しない。
さて、そんな上手い話があるのか?

あるのである。

絶対に赤字にならない、損しない、そんな都合のよい映画の作り方、公開の仕方があるのだ!

長くなったので、続きはまた今度……

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