soe006 アフター・ザ・クリスマス

この日記のようなものは、すべてフィクションです。
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アフター・ザ・クリスマス

December 29, 2003

あるところに、素直で可愛らしい姉妹が住んでいました。
クリスマスにサンタクロースがやって来て、
「良い子にはプレゼントをあげよう」
サンタクロースは、暖炉の煙突から2枚の金貨を投げました。
金貨は、雪で濡らしちゃったので暖炉の傍に干していた、靴下のなかに落ちました。
枕元に靴下を置いて寝ると、翌朝、プレゼントが入っているって噂話の始まりであります。

さて、クリスマスって、いったいなんでしょうね。

若者にとっては、銭(プレゼント)の魅力でスケベを実行に移す日。
オヤジにとっては、バカ騒ぎで日常のストレスを発散する日。ついでにゲロも吐く日。
家庭の主婦にとっては、予約していた美味しいと評判のケーキ屋に行列をつくる日。
子どもにとっては、臆面もなくゲームやヌイグルミをおねだりしても怒られない日。
売れないタレントさんにとっては、にわかマダム相手のディナーショーで荒稼ぎする日。
キリスト教の信徒さんにとっては、イエスの生誕を祝う日。

う〜ん、どれも間違っているようで、どれも正解なのかなぁ。

クリスマス(Christmas)は、キリスト(Christ)のミサ(Mass)って意味だと思うのですが、もともとキリストって言葉はギリシャ語のクリストスが起源だったわけで、本来は「宗教上の儀式にのっとって頭に油を塗られ聖別された人」の意味で、だからイエスも最初は「Jesus the Christ=聖人であるところのイエス」と呼ばれていたんですね。
それがいつのまにか、間の「the」が省略されて、イエスって人の固有名詞として用いられるようになっちゃったみたいです。

クリスマスって名称も国によってまちまちで、フランスではノエル(Noel)、イタリアではナターレ(Natale)と呼ばれ、これはラテン語のナタリス(Natalis=誕生日)が語源だそうです。
ドイツ語ではヴァイナハト(Weihnacht)、これは「聖夜」って意味らしいです。

日本では先に書きましたように、商業的な捉え方をしているので、12月24日のクリスマス・イヴと翌25日のクリスマス・デイが過ぎると、次の歳末/年始商戦に向けて、ピタッとクリスマスは終わってしまいます。
ところがキリスト教国では、12月24日から、公現祭(または神顕祭)と呼ばれる翌年1月6日までの14日間がクリスマス・シーズン(またはクリスマス・ホリデイ)でありまして、その期間中は街にクリスマス・ソングも流れています。

イエス誕生のエピソードは、新約聖書のルカ伝やマタイ伝で語られていますが、日付に関しての記述は一切ありません。
だから、12月25日がイエスの誕生日っていうのは、大嘘であります。
キリスト教研究者によりますと、現在では、紀元前4年の夏ごろに産まれたって説が有力だそうです。
クリスマスを祝うって行事も、3世紀になってから始まったみたいで、しかも記録に残っている最古の降誕祭は5月20日だったそうです。

それがどうして真冬の12月25日になっちまったんでしょうね。

冬至ってありますよね。1年でいちばん陽が短い日。
その日を境にしてどんどん陽が長くなっていきます。
いわば太陽の誕生日ってわけですね。
日本ではこの日にカボチャやコンニャクを食べると風邪をひかないとか、医学的根拠が希薄な習慣があります。
戦前は、修験者や行者が祈祷をしながら薪を燃やし、まだ燻っている炭火の上を、無病息災や家内安全を祈る信者に歩かせたりする信仰儀式もあったそうです。インド人もビックリですね。

ヨーロッパ諸国にも同じような冬至のお祭りが、クリスマス以前から行われていて、収穫祭とか太陽祭とか謝肉祭とか呼ばれていたんですね。
大地に収穫をもたらす太陽や自然への、感謝のお祭りであります。
太陽に感謝する日ってことで、「Sunday=太陽の日」と名付け、この日だけは自分の利害は考えず神に感謝しましょうよってことから、後年、日曜日は安息日としてサラリーマンの休日になったりします。
ま、そうしたヨーロッパ各地にあった土俗的な信仰を、むりやりイエスの誕生日とリンクさせ、キリスト教の布教に利用したわけですな。
クリスマス・ツリーなんかも、ゲルマンの冬至のお祭り(Yule=収穫祭)の風習から受け継いだもので、ヤドリギを飾るのは古代ケルト人のオマジナイが起源だったらしいです。

そんなこんなの経緯を経て、カトリックは地方の信仰や宗教を吸収合併しつつ勢力を拡大していったわけですが、プレズビテアリアン(長老派)やピューリタン(清教徒)などのプロテスタントは、歌舞音曲を否定してきたので当然クリスマスなんてものは頑固に禁止していました。
ところが近年はだいぶ緩和されてきたみたいで、プロテスタントの人たちもクリスマスを祝っているみたいです。
つまり、クリスマスというものは、信仰/宗教の寄せ鍋みたいなものです。

どぉ、今日の「そえたいそえりろん」は勉強になったでしょ?

さて、俺の今年のクリスマスは、『ダイハード』『シザーハンズ』『アパートの鍵貸します』の3本立てをビデオで観て、クリスマス・ソングを聴きながらベッドに入るという優雅なものでした。
この贅沢なひとときは、恋人も友達もいない独身者に与えられた特権であります。

頑張ってプレゼントを買ったのに、あっさりフラれてスケベを実行できなかったバカモノ若者よ。世の中、銭の力だけでは思い通りにならないこともあるってことが、よくわかったでしょ?
来年のクリスマスは、ここで仕入れたウンチクを披露して、知的にアタックするべし!
「げっ、クリスマスおたくだ!」……って気味悪がられて、再度フラれる可能性は大きいと思うけどさ。

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