チェロ・ソナタ第3番 イ長調 作品69
ベートーヴェンが作曲した5つのチェロ・ソナタは、J.S.バッハ以後はじめてチェロの機能を存分に発揮させた傑作として、チェロの新約聖書とも呼ばれています。
第3番は、「交響曲第5番 運命」、「交響曲第6番 田園」、「ピアノ協奏曲第5番」、オペラ「フィデリオ」などの名作と前後して作曲されているだけあって、中期ベートーヴェンの漲る情熱がほとばしっており、チェロとピアノが五分五分のパワーで激しくぶつかり合う緊張感に興奮させられます。
この第3番は、チェロ奏者にとってかなりの難曲としても知られている。いかにも中期ベートヴェンらしいゴツゴツした楽想のなかで、ハイポジションの音域を濁らずに出すのが難しいらしい。
普通はチェロの聞かせどころになるはずの緩徐楽章もない。
しかし歌われる旋律は性格がはっきりしていて、親しみやすさもあることから、5つのチェロ・ソナタのなかでは最もひろく知られ、演奏機会も多い曲です。
作曲年代:
1806年に断片的なスケッチが始まり、1807年に着手。1808年夏にハイリゲンシュタットで完成
友人でパトロンだったグライヒェンシュタイン男爵に献呈されている
楽曲構成:
第1楽章 アレグロ・マ・ノン・タント イ長調 2分の2拍子 ソナタ形式
第2楽章 スケルツォ アレグロ・モルト イ短調 4分の3拍子
第3楽章 アダージョ・カンタービレ−アレグロ・ヴィヴァーチェ
ホ長調 4分の2拍子の短いアダージョは序奏の扱いで、イ長調 2分の2拍子のアレグロで主部に入る。ソナタ形式
演奏時間:約26分
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集
ピエール・フルニエ(チェロ)
1. チェロ・ソナタ第1番ヘ長調 op.5-1
1959年6月 ステレオ録音 |
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
1. チェロ・ソナタ第3番 イ長調op.69 1961-63年 ステレオ録音 Philips |
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番
ヨーヨー・マ(チェロ)
1. チェロ・ソナタ第3番イ長調op.69 1981-85年 デジタル録音 CBS Columbia |
曲が曲だけにチェロ奏者には男性的な逞しさが必要。フルニエ&グルダには、ぐいぐいアクティブに前進する力強さがあり、ロストロポーヴィッチ&リヒテルには圧倒的なスケール感があります。
それらエネルギッシュな外観を、第三者的視点から無骨なユーモアとして捉えているのがヨーヨー・マ&アックス。