歌曲集「さすらう若人の歌」
マーラーはカッセル王立歌劇場の副指揮者時代に、同劇場のソプラノ歌手、ヨハンナ・リヒターに恋をし、失恋した。マーラー最初の歌曲集「さすらう若者の歌」は、このときの体験を綴った自作の詩をテキストに書かれた自伝的作品で、マリオン・フォン・ヴェーバー夫人との失恋体験を契機に書かれた交響曲第1番「巨人」と同時期に作曲されている。
楽曲は、オーケストラ伴奏による4曲の男声独唱から成り、第2曲と第4曲のメロディは交響曲第1番でも使用されている。
作曲年代:
1883年から85年にかけてピアノ伴奏譜が作曲され、1891年から93年にオーケストラ譜を作曲。さらに1896年ごろまで改訂や修正が加えられたと推定されている。
初演:
1896年3月16日 ベルリンにて、アントン・ジスターマンの独唱とマーラー自身が指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。
楽曲構成:
第1曲 恋人の婚礼の日に
第2曲 朝の野を歩けば
第3曲 灼熱の剣をを胸に秘め
第4曲 愛しい君の青き瞳
演奏時間:約17分
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マーラー:交響曲第1番
ラファエル・クーベリック指揮 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
1. 交響曲第1番ニ長調「巨人」
1967年(1) 1968年(2) ステレオ録音 |
この歌曲集は、むかしからフィッシャー=ディースカウとフルトヴェングラー指揮フィルハーモニアによるEMI盤(1952年録音)が決定的名盤とされてきた。ひたむきで危うい若者の感性、自己破壊衝動が熱く表現され、これに勝る名演は見当たらない。しかしモノラル録音なので、最初に手に取るのは少々億劫になる。そこで次策として紹介するのがクーベリック盤。円熟した歌唱、完成度という点では、こちらの方がより安定しているかも。関連性の強い交響曲第1番「巨人」とのカップリングも高ポイント。このF=ディースカウに心動かされた方は、ぜひフルトヴェングラーとの共演盤も聴いてください。
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マーラー歌曲集
レナード・バーンスタイン指揮 トーマス・ハンプソン(バリトン)
1. 歌曲集「さすらう若人の歌」
1990年 デジタル録音 |
アメリカ時代からマーラーを熱心に取り上げてきたレナード・バーンスタインが、マーラーゆかりのウィーン・フィルハーモニーを指揮したデジタル録音盤。当時34歳のトーマス・ハンプソンの歌唱が、若者特有のひたむきさを巧く表現しています。
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マーラー歌曲集
ピエール・ブーレーズ指揮
トマス・クヴァストホフ(バリトン)-1
1. 歌曲集「さすらう若人の歌」 2003年 デジタル録音 (Deutsche Grammophon) |
上記バーンスタイン盤の情念のこもった演奏とは対照的に、明るく透明感のあるマーラー歌曲集。これまでのイメージを一変させた、ブーレーズによる21世紀のマーラー録音。三者三様の歌唱も楽しめます。