ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26
1914年に始まった第1次世界大戦では兵役を免除されたプロコフィエフだったが、1917年に起こったロシア大革命では、出処進退の決断をせまられる事態となった。1918年の夏、日本を経由してアメリカにむかったプロコフィエフ。日本へは6月1日に着き、帝国劇場や横浜でリサイタルをひらいている。
「聴衆は音楽にあまり理解がなかったが、私は日本人のために弾くことは楽しかった。彼らは驚くほど静かに、注意深く音楽に耳を傾けていた。技巧的なパッセージでは拍手もわいた」(プロコフィエフの手記より)
ニューヨークに到着したのは9月10日。アメリカでは「鋼鉄の指、鋼鉄の手首、鋼鉄の二頭筋と三頭筋をもつピアニスト」として演奏は高く評価されたが、彼の急進的な作品、オペラ「三つのオレンジへの恋」などへの理解は得られなかった。プロコフィエフは約3年半の滞在のあと、新大陸に見切りをつけ、ヨーロッパに移住。彼の協奏曲のなかで最も人気の高い「ピアノ協奏曲第3番」を発表する。
「ピアノ協奏曲第3番」は、彼のほかのピアノ協奏曲とは異なり、伝統的な3楽章構成で書かれており、初期の作品にあった刺激的な表現は抑えられている。第3楽章の冒頭主題は、プロコフィエフが日本で聴いた長唄「越後獅子」からのメロディが用いられている。
作曲年代:1917年 ペトログラードで着手 1921年 パリで完成
初演:1921年12月16日 ストック指揮シカゴ交響楽団の演奏会
ピアノ独奏は作曲者自身
楽器編成:独奏ピアノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、大太鼓、カスタネット、シンバル、弦5部
楽曲構成:
第1楽章 アンダンテ序奏つきのアレグロ
第2楽章 変奏曲形式のアンダンティーノ
第3楽章 ロンド形式のフィナーレ
演奏時間:約27分
プロコフィエフ&ラヴェル:ピアノ協奏曲
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
1. プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調op.26 1967年 ステレオ録音 (Deutsche Grammophon) |
奔放なイマジネーションのおもむくまま、強靱なタッチで鋭く突き詰めてゆくアルゲリッチのピアノ。閃きのテクニック、逞しい音色、アルゲリッチの個性がくっきりと刻印されている名盤。アバドの反応も鋭くパンチが効いている。みなぎる躍動感が心地よい刺激を与える1枚。カップリングのラヴェルがこれまた超絶名演。
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3-5番
ウラディミール・アシュケナージ(ピアノ)
1. ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26 1975年 ステレオ録音 (Decca) |
楽想がクリアに伝わってくるアシュケナージ&プレヴィンのデッカ録音。ロシア的な仄暗いロマンティズムやエキゾティシズムも漂ってくる、スタンダードな名演。
比類なきサンソン・フランソワサンソン・フランソワ(ピアノ)
1. フランソワ:映画音楽「ごろつきのためのバラード」 モノラル/ステレオ録音 (EMI) 8枚組 輸入盤 |
単独ディスクが内外とも廃盤なので、8枚組ボックス・セットの紹介でご勘弁ください。収録曲はレア・レコーディングのものが多いですが、いずれもサンソン・フランソワの個性に彩られた名演ばかりです。
プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」は、ヴィトールド・ロヴィツキ指揮フィルハーモニア管弦楽団による、1964年ステレオ録音。クセの強いフランソワは出来不出来の差が激しかったが、この録音はベスト・コンディション時の演奏。単独盤再発売が待たれる1枚。