グリーンスリーヴスによる幻想曲
「グリーンスリーヴス」は、エリザベス王朝時代にイングランドとスコットランドの国境付近の金鉱探したちが舞曲として用いていた旋律。
この歌は16世紀半ばまで口頭伝承で受け継がれ、17世紀にはイングランドの誰もが知っている曲となった。1575年のロンドン書籍出版業組合の登録簿には、「ザ・バラード・オブ・マイ・レディ・グリーンスリーヴス」として記載されている。
1602年ごろ、ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616年)はこの旋律について言及した戯曲「ウィンザーの陽気な女房たち」を発表し、今日でも世界各国で頻繁に上演されている。
1929年、ヴォーン=ウィリアムズはこの喜劇に基づいた4幕のオペラ「恋するサー・ジョン」を作曲。
第3幕で「グリーンスリーヴス」の旋律を用いた。
その部分を独立させたのが「グリーンスリーヴスによる幻想曲」で、小編成のオーケストラ用にラルフ・グリーヴスが編曲したものの他に、連弾や2台ピアノによるもの、ピアノ伴奏付き弦楽合奏によるもの、オルガンや混声四部合唱によるものなど、様々な版がある。
初演:
1934年9月27日 ロンドンにて 指揮はヴォーン=ウィリアムズ自身
楽器編成:(ラルフ・グリーヴス編曲版)
弦楽オーケストラ、ハープ(またはピアノ)、フルート(または独奏ヴァイオリン)
楽曲構成:全体は3つの部分から構成されている。
導入部……レント 8分の6拍子
ハープのアルペッジョを伴奏に、フルートが静かに下降するモチーフを奏でる。第2ヴァイオリンとヴィオラによって「グリーンスリーヴス」主題が歌われ、第1ヴァイオリンが対旋律的に伴奏を絡ませる。ハープのアルペッジョが現れ、「グリーンスリーヴス」主題の後半が第1ヴァイオリンで繰り返される。
中間部……アグレット 4分の4拍子
ヴァイオリンの和音によって中間部の開始が告げられる。ヴォーン=ウィリアムズがノーフォーク州で採取した「ラブリー・ジョーン」の旋律が、ヴィオラおよびチェロによって歌われる。旋律はフルートに移り、弦のピッチカートが伴奏。弦の伴奏がアルコになって、フルートとヴァイオリンの強奏で「ラブリー・ジョーン」主題はクライマックスをむかる。
再現部……フルート独奏の経過的なカデンツァが挿入された後、冒頭の導入部が再現される。ヴィオラとチェロによって再び「グリーンスリーヴス」主題が歌われ、最後にヴァイオリンが「グリーンスリーヴス」主題を反復しながら、曲は静かに閉じられる。
演奏時間:約8分30秒
ヴォーン・ウィリアムズ:管弦楽曲集
エイドリアン・ボールト指揮
1. 音楽へのセレナード 1969年(1) 1970年(2,4) 1968年(3,5) 1967年(6) |
ボールト指揮のヴォーン=ウィリアムズ作品集は、柔らかい肌触りを大切にした味わい深い1枚。民謡風の素朴なメロディをデリケートに再現しています。
ヴォーン・ウィリアムズ:管弦楽曲集
ネヴィル・マリナー指揮
スカイラ・カンガ(ハープ) 2,4
1. トーマス・タリスの主題による幻想曲 1972年 ステレオ録音 Decca |
マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン=イン=ザ=フィールズは、モダンでクールな冴えた音色ですが、イギリスの田園風景を偲ばせる水彩画のような、清潔で爽やかな抒情感もあります。
エルガー&ヴォーン・ウィリアムズ:管弦楽曲集
ジョン・バルビローリ指揮
エルガー: 1962年5月 ステレオ録音 EMI |
バルビローリ指揮シンフォニア・オブ・ロンドン盤は、大編成の弦楽合奏に9人の弦楽合奏、それに弦楽四重奏を組み合わせるという、三つのアンサンブルの複合形態を採用。バロック時代の合奏協奏曲を現代に蘇らせたような新鮮な響きがあります。