soe006 ライオネル・ハンプトン・クインテット

ライオネル・ハンプトン・クインテット

January 31 2011

ジャズ・ミュージック・ライブラリー

年末のクリスマス・アルバム蒐集以降、ボーカルと中間派(スウィングより)の音楽に傾いてきてるような気がする。
やっぱりメロディーって大切だよね。
チャーリー・クリスチャンが加わったベニー・グッドマン・セクステットのCDを注文してるが、どうも廃盤のようで入荷未定。こっちが先に届いた。

Lionel Hampton Quintet
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Lionel Hampton Quintet

Verve

1 Flying Home
2 Je Ne Sais Pas
3 On The Sunny Side Of The Street
4 April In Paris
5 Don't Be That Way
6 These Foolish Things
7 The Way You Look Tonight
8 It's Only A Paper Moon

ライオネル・ハンプトン(Vib)、バディ・デフランコ(cl)、オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds)

1954年4月ニューヨーク録音

ノーマン・グランツのVerveが得意としていたオールスター・セッション録音。スイング時代の巨人ライオネル・ハンプトンに新進気鋭のリズムセクションをぶつけ、知性的なデフランコのクラリネットを配置。ハンプトンがレパートリーとしていたお馴染みナンバーが並んでいる。17分超の「フライング・ホーム」で次第にエキサイトしていく後半が圧巻!

多人数でグイグイ盛り上げるビッグバンドのハンプトンもいいが、名人級が顔を並べたコンボでリラックス・ムードのハンプトンもすこぶる良い。

お馴染みのメロディを、お馴染みのプレイヤーが、お馴染みの手法で。
このタイプの音楽が、いまはいちばん心地良く感じられる。

このレコードは、バディ・デフランコの参加が面白い。

ビ・バップ革命以降、急速に人気を失ったクラリネット。
クラリネットは音量が小さく響きが上品なので、荒々しく猛々しいバップ演奏に向いてなかったんだろうな。もちろんベニー・グッドマンもウディ・ハーマンも演奏活動は続けていたけど、スウィング時代のスタイルを変えることはなく、いわば懐メロとして聴かれていたわけで。
モダン以降、時代のサウンドをクラで奏でていたのはデフランコくらいでしょう。アート・ペッパーなどのサックス奏者がときどき余技で吹くくらいで。他にいないもんね。デフランコは、最後のクラリネット・ジャズ奏者かも知れない。
あと少しすると、エリック・ドルフィーがバス・クラリネットで大胆な演奏を聴かせてくれるのだが。バス・クラは別物だな。一緒にはできない。
テクニックに長けていたデフランコはクール派と見られ、演奏は機械的だと揶揄されていたらしい。このレコードに収録された「イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン」などを聴けば、クールってレッテルはとんだ筋違いだと思うのだが。

デフランコの演奏聴いてたら、自分でも吹いてみたくなったよ。
数万円くらいの安いクラリネット買っちゃおうかな。
ガキのころブラバンでアルトサックスやってたから、木管ならなんとかなりそうな気がする。
ウディ・アレンも筒井康隆もクラリネットだし。
クラリネットだったら、なんとかやれそうな気がする。

閑話休題。

ライオネル・ハンプトンについては、超個人的に1981年のオーレックス・ジャズ祭に止めを刺す。

とにかく大興奮!

同日セットになっていたフレディ・ハバード、スタン・ゲッツ、ジェリー・マリガン、ボブ・ブルックマイヤー、ミルト・ジャクソン、ロランド・ハナ、レイ・ブラウン、アート・ブレイキーという怪物級のメンツによるオールスター・ジャム・セッションが霞んで、ほんとうに霞んでしまってまるで記憶に残っていないのよ。
この年のオーレックスは武道館で2日間全4セット聴いてるから、もしかしたらハンプトン楽団とセットになってたのは、ハンク・ジョーンズ、アート・ファーマー、ベニー・ゴルソン、ナンシー・ウィルソンとの組み合わせだったかも知れないが、こっちも記憶に残っていない。

1981年のオーレックスといえば、ハンプトン楽団に尽きる。

歌って踊って、奇声を上げて、ドラム叩いて、2本指でピアノも弾いて。
とにかくサービス精神たっぷり、最後まで楽しくて嬉しくて。
翌日、秋葉原の石丸電気にあったハンプトンのレコードを全部買った。
全部といっても、『ニューポート'78』のライヴ盤と2枚組のオムニバス盤だけ。それしか置いてなかったのよ。数カ月後にGNPの名盤『スターダスト・アット・ライオネル・ハンプトン・オールスターズ』も買ったけど。
そのくらい当時はスウィング・ビッグバンドの人気は落ちていたわけ。
渡辺貞夫の『カルフォルニア・シャワー』は街の小さなレコード屋にも並んでいたけど。
いやおれだって、オーレックスで来日するまでは、完全に過去の人扱い、あれぇまだ生きてたの? って思ってたし。
だから、武道館行ったのも前記オールスター・ジャム・セッションがメイン・イベントだったと思う(だんだん思い出してきたぞ!)。
ビッグバンドの醍醐味を満喫できた、最高のコンサートでした。

オーレックスのライヴ盤は東芝から発売されたが、結局買ってない。
リリースされたときは、すでに熱が冷めてたのかな。

オーレックスのライヴ盤、いま手に入るのは 1982年のジャコ・パストリアス・ビッグバンドだけ。
ジャコだけ版権が異なって別のレーベルから出たんだよね。
4年分まとめた完全収録盤をリイシューしてくれないかな、東芝さん。
1枚あたり 300円くらいの格安ボックスで出たら絶対買うんだけどな。
(1枚1000円以上なら買わない)

今回紹介しているCDは、LP時代は2枚に分売されていた録音を1枚にまとめたもの。
ほんとうはこっち(The Complete Lionel Hampton Quartets and Quintets with Oscar Peterson)が欲しかったんだけど。
5枚組で8000円超はちと高い、手が出せんかったんよ。

ライオネル・ハンプトン Lionel Hampton

1909年4月20日、ケンタッキー州ジェファーソン郡ルイビル生まれ(出生日については諸説あり)。ジャズ界初のヴィブラフォン奏者で、スウィング時代のジャズ・ジャイアンツ。
ジミー・バートランド(1900-60年)を手本にドラマーとしてデビュー。カーティス・モスビーのブルー・ブロワーズやポール・ハワード楽団など西海岸のバンドで演奏。
1930年にレス・ハイト楽団の一員としてルイ・アームストロングのレコーディングに参加したとき、スタジオに置いてあったヴァイブを弾くようルイに勧められて転向。
1936年、ロサンゼルスの「パラダイス・カフェ」にて自己のバンドを率いて出演しているところをベニー・グッドマンに発見され、テディ・ウィルソン、ジーン・クルーパとともにベニー・グッドマン・カルテットを結成。6週間後にグッドマン楽団に正式加入し、1938年のカーネギー・ホール・コンサートなどに出演。グッドマン楽団のスター・プレイヤーとして名声を確立。
1940年にグッドマン楽団を辞し、自己のビッグバンドを旗揚げ。「フライング・ホーム」や「エアメイル・スペシャル」などヒット曲を連発。同楽団はハンプトンが体調不良で引退する1995年まで断続的に存続し、アーネット・コブ、イリノイ・ジャケー、ダイナ・ワシントン、キャット・アンダーソン、マーシャル・ロイヤル、デクスター・ゴードン、ジョニー・グリフィン、チャールス・ミンガス、ファッツ・ナヴァロ、ウェス・モンゴメリー、ベティ・カーターなど錚々たるスター・プレイヤーを輩出。1953年の欧州ツアーには、クリフォード・ブラウン、アート・ファーマー、クインシー・ジョーンズ、ジミー・クリーヴランド、ジジ・グライス、ジョージ・ウォーリントン、アニー・ロスが参加している。
50-60年代はビッグバンドと並行して、ベニーグッドマン、オスカー・ピーターソン・トリオ、スタン・ゲッツ、バディ・デフランコ、アート・テイタム、バディ・リッチなどとのジャム・セッションを Verveレーベルに録音。
『ヒットパレード』(51年)、『ベニイ・グッドマン物語』(56年)などの映画にも出演。
ステージではときおりドラムを叩き、歌も披露。左右2本の指だけで弾くピアノ演奏もコンサートの売り物。
第2回オーレックス・ジャズ・フェスティバル(1981年)ではゲストにウディ・ハーマンを加えたオールスター・ビッグバンドで来日。フュージョン全盛の時代にスウィング・ジャズの楽しさをアピールし、往年のファンはもちろん、若い世代にも絶賛された。アルト奏者のマルタがはじめて日本に紹介されたのもこのとき。

1995年に心臓発作で倒れ演奏活動から引退。2001年1月、ハンプトンが15年間使用していたヴィブラフォンが、スミソニアン・国立アメリカ歴史博物館 (ワシントンDC)に収められた。
2002年8月31日、心不全にて死去。享年94歳。

ジャズ・ミュージック・ライブラリー
イギリスの廉価盤レーベル Real Gone Jazz(2011年08月06日)
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