今月のレコード・ライブラリー
June 20, 2009
チャイコフスキー&シベリウス:VN協奏曲
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
1. チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 1970年 ステレオ録音 Decca |
ジュリアード音楽学校出身、1967年のエドガー・レヴェントリット国際コンクールで優勝した韓国人ヴァイオリニスト、チョン・キョンファ(鄭京和)のデビュー・アルバム。共演はアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団。
クラシックの名門レーベル、英国デッカよりのリリース。
キョンファのチャイコフスキーは、1981年録音のデュトワ指揮モントリオール交響楽団盤(Decca)もあります。技巧的にはより安定した力強さが感じられますが、キョンファの個性が剥き出しになっているのは、1970年のデビュー盤ですね。
挑みかかるような気迫と熱気が、ガンガン迫ってくる演奏です。
まだ所有しているレコード(LP)が10枚に満たなかった中学生のころ、毎日のように聴いていたので、チャイコVN協奏曲のスタンダードになってしまいました。
とても人気のある楽曲なので、山のように録音盤があり、おそらく多くの方が他のディスクをベストに挙げられるでしょうが、超個人的にキョンファ&プレヴィン盤がいちばん好きなのであります。
これは一目惚れ。理屈抜きの恋だから、どうしようもない。しかもレコードは一方通行で、こちらが先に振らない限り、永遠に失恋がない。まったく始末に負えません。
こっちが先に振った場合は、失恋って言わないんだっけ?
振られた経験はあっても、振ったことは一度もないから、よく分かんないや。
基本、来る者拒まず去る者追わず、据え膳食わぬは男の恥。
閑話休題。
同時収録のシベリウスが、これまたチャイコ以上に素晴らしい演奏で、(宇野功芳氏の讃辞をそのまま借りれば)これさえあれば他は必要ない、超名盤なのであります。(*1)
チャイコはいかにもジュリアード出身者らしい無国籍タイプの、ロシア風の土臭い民族色が稀薄な演奏でしたが、こちらはフィンランドの過酷な自然、硬質の孤独感、清らかな美しさが感じられて最高。
前に、ヴァイオリン協奏曲は、メン・チャイ、ベト・ブラよりもサン=サーンスの3番が好きだと書きましたが、サン=サーンスの次に好きなのがシベリウス(シベリウスのVN協奏曲はこの1曲だけ)。
交響詩「フィンランディア」以外のシベリウスは聴いたことがない、シベリウスってどんな作曲家か知りたいという方には、超オススメ!
*1 オイストラフ&オーマンディ(CBS)やハイフェッツ&ヘンドル(RCA)、パールマン&プレヴィン(EMI)など、他にも素晴らしい録音盤はありますけどね。
やっぱりキョンファ&プレヴィン盤が、いちばん好きですね。
サン=サーンス&ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
1. サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 |
これはもう名盤中の名盤ですね。
ピリピリした緊張感に息が詰まりそうになります。キョンファのヴァイオリンは、このころ(1970年代、デビューしてから10年くらい)がいちばん情熱的で、気迫が漲っていました。
フォスター指揮ロンドン交響楽団も迫力たっぷりで、聴き応え200パーセント増。英国の名門レーベル・デッカは、60〜70年代のアナログ録音が最高です。
ラロ&サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
1. ラロ:スペイン交響曲 Decca |
チョン・キョンファのヴァイオリンがまだ鮮烈だった1980年の、フランクとサン=サーンス。
キョンファはデュトワ&モントリオール響との共演で、サン=サーンスの「ハバネラ」と「序奏とロンド・カプリチオーソ」も録音しているけど、それは交響詩をまとめた別のアルバムに収録されていて、オマケ収録のサン=サーンス「VN協奏曲 第3番」は、フォスター指揮ロンドン交響楽団による1975年録音。
デッカ・ベスト100シリーズの廉価盤で売られているサン=サーンスの「VN協奏曲 第3番」は、ヴュータンの「VN協奏曲 第5番」とのカップリング。この時期のキョンファはどれも素晴らしいので、結局、収録曲がダブってでも全部買っちゃうんだよな。
不経済なので、メーカーさんはもう少し組み合わせを考えて欲しいです。
メンデルスゾーン&チャイコフスキー:VN協奏曲アイザック・スターン(ヴァイオリン)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 CBS Sony ステレオ録音 |
アイザック・スターンの「メン・チャイ」。
ロシア的な荒々しい感情表現と雄大なスケール感、巨匠の貫禄に圧倒されるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ロストロポーヴィチのシンフォニックかつエネルギッシュな伴奏も絶妙。文句なしの名盤。
メンデルスゾーンは、オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団と共演した1958年の演奏のほうが、華やかな緊張感があります。小澤の伴奏も見事だし、ベテランならではの余裕たっぷりなリラックスムードも渋くて、魅力ではありますが。
パリのマリア・カラス(第1集)
マリア・カラス(ソプラノ)
歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」(グルック) EMI |
マリア・カラスは、死後40年を経た今でもイタリアでは絶対の人気があって、どんなに素晴らしい新人歌手が現れても、「カラスには及ばないね」の一言で評されてしまうという恐るべき存在。
独特の癖がある歌手なので、好き嫌いが極端に分かれちゃいますね。私は、イタリア・オペラはあまり聴かないので、どうも、苦手なタイプです。
このCDは、ゴタゴタがあってオペラの舞台から降りてしまったあと、60年代のパリ録音。舞台では一度も演じなかった「カルメン」や、サン=サーンスなどフランス・オペラの著名なアリアをずらっと並べています。伴奏は、今年(2008年)、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに出演したジョルジュ・プレートル指揮のフランス国立放送局管弦楽団。