今月のレコード・ライブラリー
July 20, 2009
ベートーヴェン:交響曲全集
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ベートーヴェン:交響曲全集 第1番-第9番 1975年〜80年録音 Brilliant 輸入盤 |
1548年にザクセン選帝侯の宮廷楽団として設立された最古の名門オケ、シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)による、70年代録音のベートーヴェン交響曲全集。
とにかく安いし、演奏内容は素晴らしいし、現在販売されているベト交全集のなかで、最もコストパフォーマンスの高いセット。一家に1組あっても、邪魔にはならんでしょう。とりあえずベートーヴェンの交響曲を全部聴いてみたいって方には、声を大にしてオススメいたしますです。
超個人的には、5番、6番、7番が充実しているのが嬉しかったですね。テンポは中庸ですが、ここぞってところはホルンもティンパニも大迫力。第9番の合唱にも満足。
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番
フリッツ・ライナー 指揮
1. 交響曲第5番 ハ短調「運命」 1955-59年 ステレオ録音 |
とてつもなく速いテンポの「第5番」。ピリオド系のメトロノーム演奏だってここまで早いのは聴いたことがない。おそらく録音史上最速じゃないでしょうか。ただ猛烈に早いってだけでなく、シカゴ響の一糸乱れぬガッチリした構造美学がベースにどっしりあって、スケール感が損なわれていないのが凄いところ。格好良くスポーティに突っ走ってるカラヤン&ベルリン・フィルみたいな演奏ではありません。
息詰まるような興奮の「運命」と「第7番」。人気のカルロス・クライバー盤より芯がしっかりしているし、往年のRCA録音(リビング・ステレオ)だし、こっちの方が迫力ありますって。
聴いてるあいだじゅう、息してるのも忘れて、身動きできなくなります! これは金縛り名盤と呼ぶことにしよう。
ハイドン:交響曲第88番「V字」&第100番「軍隊」ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団
1. 交響曲第88番ト長調Hob.1-88「V字」 |
ブルーノ・ワルター晩年の、1961年コロンビア録音。
この演奏スタイルは、確かに古い。古いんだけど、それを理由に捨てられない良さがあります。たぶん、もう2度とこのようなタイプのハイドン交響曲って現れないと思う。それに、ワルターの音楽を愛した人たちの想いもあります。
あと何十年か経ったら、忘れられるかも知れませんが……その時がくるまでは、大切にしたいと思います。
ハイドン:ロンドン交響曲全集
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
1980-82年 デジタル録音 |
今年(2008年)は、ヘルベルト・フォン・カラヤンの生誕100年記念の年だってことで、ものすごい量のカラヤンBOXが発売されております。
残りの人生すべてを捧げても、全部聴けそうにありませんです。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
1. ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78「雨の歌」
1960-61年 ステレオ録音 |
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番は、第3楽章冒頭の主題が、歌曲「雨の歌 作品59-3」と同じことから「雨の歌」のニックネームで知られている曲ですね。
歌曲の作詞は、クラウス・グロートという詩人によるものだそうで(歌曲のほうは聴いたことないのよ)、内容は「降る雨をみながら、過去を思い出す」というものらしいです。これと、恩師ロベルト・シューマンの奥さんとブラームスの秘められた恋をダブル・イメージさせて、ちょっと淫靡な妄想に耽るのもまた一興かと。
ブラームスの室内楽は、どれもそんな翳りがありますけどね。
シェリングとルービンシュタインのRCA盤は、名盤中の名盤。メロディの歌わせかたがとても美しく、大人の恋だなあと、妙にじんわりした気分になっちゃいます。