「のだめカンタービレ」についての覚え書き:序章
April 10, 2007
お話は、去年の暮れに遡る。
その日、私は、年末恒例の「ベト交チクルス in 僕の部屋」という超個人的な催しを行っていた。
毎年12月になると、(日本では)あちらこちらでベートーヴェンの「第9交響曲・合唱付」を演奏している。
その拡大縮小版が「ベト交チクルス in 僕の部屋」。
9番だけなんてしみったれてる、交響曲全部まとめて聴こうじゃないか!(拡大部分)。コンサートなんて贅沢だ、家にあるCDで充分愉しめるじゃないか!(縮小部分)。
早い話、ベートーヴェンの交響曲第1番から第9番までを、手持ちのCDでイッキに聴いてしまおうという、暇はあるけど銭がない小市民の、ささやかなる音楽イベント。
毎年恒例なんて言ってるけど、始めたのは一昨年から。
レナード・バーンスタインのベートーヴェン交響曲全集(DG)を買って、たまたま年末にイッキ聴きしたのが、その起源と言われている。
栄誉ある第2回は、夏に買ったヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンのベト交全集。
つまり恒例とか言ってるけど、まだ2回しかやってなくて、今年もやるのかどうか、まだ決まってません。
そもそも、なんでそういう事をやろうかと思ったのか?
原因は、クラシックCDの価格崩壊。
先のバーンスタイン盤なんか、LP時代は豪華なボックスに入って16,000円くらいしてたんですよ。
ちょうどサントラ盤熱が冷めたころ、それでも習慣でCDショップに立ち寄って、偶然目にしたベト交ボックス。嗚呼、あこがれのバーンスタインが1万以下で売られている、これが買わずにいられようか!
ブロムシュテットのブリリアント箱なんて、3000円ですよ! 新譜CD1枚ぶんの値段で、ベートヴェンの交響曲が全部まとめて聴ける倖せ!
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ベートーヴェン:交響曲全集
レナード・バーンスタイン指揮
ベートーヴェン:交響曲全集 第1番-第9番 1977年〜79年録音 Deutsche Grammophon |
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ベートーヴェン:交響曲全集
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ベートーヴェン:交響曲全集 第1番-第9番 1975年〜80年録音 Brilliant 輸入盤 |
で、買ったもののベートーヴェンの交響曲全集でまず聴くのは、ミスター・クラシック、誰もが知ってるジャジャジャジャ〜ンの「第5番」。ついでお馴染み「第9番」。にぎやかノリノリの「第7番」。
もし「第9」の第3楽章がうっとりするほど良いものだったら、試しに「第6番」。だけど「第6番」はもう飽きましたね。決定版のワルター&コロムビア響だけで充分って気がする。
残り5曲はまず聴かない。
よくよく計算してみると、「第5番」「第7番」「第9番」しか聴かないのなら、全集でなくバラで買った方が安いのかも。しかしそこが貧乏人の浅ましさで、つい全集ボックスに手が伸びてしまう。
しかし、そういうのはやっぱり良くないんじゃないの。
お米一粒には八十八の神様が宿っているというし、制作者側だって聴いてもらいたくて演奏を商品化してるんだから。
ということで……いつかは聴かなきゃと思っていたのですが、ベートーヴェンの交響曲って、いつもいつも聴きたい音楽じゃないし……というので「第9」の季節に1年の締めくくりとして始まったのが、「ベト交チクルス in 僕の部屋」なのでありました。
それで話の続きなんですが……昼過ぎから始めたベト交チクルスの日、小学5年生の甥っ子が、冬休みでたまたま遊びに来ていたんですね。
私の部屋は仕事場兼用なので、普段は無用の者絶対立ち入り禁止ですが、その日は中から音楽が聞こえてきたので大丈夫だろうと、ノコノコ入ってきました。で、こいつがいきなり音楽に合わせて唄い出したんですよ!
た〜りら、た〜らり、たんたたらら、たら〜ん……
「ジャジャジャジャ〜ン」なら分かります。5番の冒頭部分を知らない奴なんていませんから。私だって日常的に「アサ子さ〜ん、朝ごは〜ん」とか替え歌で唄ってますし。(私の母親の名は、アサ子さん)
「第9」の、「ものみなうるわし、ものみなたのし〜」なら分かります。
小学5年生なら学校の音楽授業で教わっているかも知れないし、愛・地球博で公開された、なかにし礼版の歌詞も普及していると聞きますから。
またTVCM等で頻繁に使われている「第6番」も、普段クラシック聴かない人でも、そのメロディを知らない人はいないでしょう。
しかし、甥っ子が唄ったのは……
なんと「第7番」の第1楽章(第1主題)!
断っておきますけど、こいつの家族、音楽とはまったく無縁な一家。普段聴いているのは流行歌とアニメソングくらい。それもテレビなどから流れてくるのを耳にする程度で、家のなかにCDなど1枚もない家庭(……と書くと殺伐としているようですが、マンガ本とゲームソフトとアニメのDVDは部屋一面に転がっている)。
しかもこいつ、50パーセントが猿で出来ているような小僧で、小学1年から3年まで3年連続して木登りで落下、1年の時は足の骨にヒビを入れ、3年のときは脳震盪で気絶してるほどの腕白坊や。
そして……この小僧ついに、唄いながら指揮振りまで始めやがった!
これはいったいどういうことか?
奴の内部でなにが起こっているのか?